コラム
ワタミの「ホワイト企業化宣言」は本当なのか? データから徹底検証する:離職率は大幅に改善(3/4 ページ)
創業者である渡邉美樹氏が10月1日、ワタミに復帰。復帰会見では離職率の低下など、「ホワイト企業化」が宣言された。「ブラック企業」と批判され続けてきたワタミだが、本当に環境はよくなったのか。ブラック企業アナリストの新田龍氏が3回にわたり、ワタミの過去を振り返るとともに現状を検証する。
取り組みの成果
従前の労働環境を考えると、改革の目標は極めて高いものであったが、ワタミは「もう後がない」という覚悟で改革を推し進め、早くも数年で次のような改善効果が出ている。
(1)店舗数削減および営業時間見直しによる従業員負担の軽減
- 直営店舗数:525店(13年度)→446店(14年度)→390店(15年度)
- 深夜営業時間の削減達成店舗数:約30店舗(14年度)→約100店舗(19年現在)
- 休日の設定:244店舗で取り組み開始→約90店舗(18年度)で継続中(人員配置が適正になった店舗で営業再開したため)→これらの結果として、17年には、社員のうち「約9割」の残業が月45時間以内に収まっている
- 勤務間インターバル制度導入:19年以降、勤務後から翌日の勤務開始までに8時間以上のインターバルを設ける制度を導入。休息時間を確保できるようになった
(2)会議・ミーティング・研修時間の効率化
- 店長職:(改善前)275時間→(改善後)140時間=▲135時間
- 一般職:(改善前)244時間→(改善後) 80時間=▲164時間
(3)メンタルヘルスサポート
- 入社1年後離職率: 22.1%(13年4月入社)→9.6%(14年4月入社)→0%(17年4月入社)
(4)コンプライアンス強化
- 16年、アルバイトを含む全従業員を対象とした労働組合「ワタミメンバーズアライアンス」を結成。約1万4000人が加入し、組合を通じて現場の声を経営陣に届ける仕組みが整う
(5)中長期的な取り組み
- 17年、春季労使交渉で労働組合が基本給底上げについて交渉し、創業以来初となる平均2512円の賃金ベースアップを実現
- 残業代は1分単位で支払い、会議やイベントも勤務時間として扱われるように
- 人事部から日々の勤務時間数、残業時間数の確認共有と上司への指導が行われる仕組みを導入
- 年に1回、全店舗に対して入店監査を実施
- エリアマネジャーが、1カ月に1回の店舗診断を行い、労務環境を確認する仕組みを導入
- 新規採用アルバイトスタッフの3割を占める外国人のために、新たに外国人専用の集合研修を17年春から実施。講師はネパール人(ワタミ社員)が担当。この取り組みにより、アルバイト定着率が10%向上
- 女性、外国人、時短社員、地域限定社員、障害者雇用を積極的に推進。とくに障害者雇用率は4%超と業界トップクラス(法定雇用率は2.2%)
- 「ミライザカ」「3代目鳥メロ」など新たなブランドを導入し、既存の「和民」「わたみん家」などからの業態転換に成功
- 企業ロゴマークやコーポレートカラー、グループメッセージを刷新
これらの徹底的な取り組みを積み重ねた結果、年間離職率(4月1日〜3月末日までの常用雇用者数の離職率)は16年が21.6%、17年15.8%、18年8.7%、そして直近の19年3月末時点では8.5%にまで低下。18年の宿泊業、飲食サービス業平均26.9%(厚生労働省「平成30年雇用動向調査結果」)を大きく下回るレベルを達成している。さらには「ホワイト企業アワード」を主催する日本次世代企業普及機構による「ホワイト企業診断」において87点を獲得し(ホワイト企業認定基準は60点)、ブラック企業の代名詞だったワタミは今や「ホワイト企業」として顕彰されるレベルにさえなっているのだ。
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