なぜ「ビーフン」に成長の余地があるのか 最大手「ケンミン食品」が狙う空白市場:長浜淳之介のトレンドアンテナ(4/5 ページ)
ビーフン最大手のケンミン食品。2016年には年間約1000万食だった売り上げは、17年以降は約1500万食へと1.5倍に増えた。どのような成長戦略を描いているのか。
ごはんと一緒に食べるカルチャー
冒頭で触れた「秘密のケンミンSHOW」はどんな内容だったのか。「テレビドガッチ」17年6月16日付の記事、「ケンミンがケンミンに突撃! 焼きビーフンの秘密を暴け!」から抜粋してみよう。
「例によってお宅にお邪魔して調理を取材するのだが、驚くほど簡単にできてしまう。肉を入れて少し焼いたら麺を入れ、野菜を乗せてフタをする、それだけ。麺に味がついているので調味が不要なのだ。(中略)なんとビーフンがメインディッシュ、おかずとして食べるのだ。さらに、ごはんにビーフンを乗せて一緒に食べる。ビーフンでごはんを巻いて頬張るその食べ方は、他のケンミンの理解を超えている」
ビーフンは主食かおかずか。神戸ではおかずとして白いご飯と食べるのも普通だし、姫路でもおかずとして給食に出てきたと聞いている。兵庫県の少なくとも南部では、かなり頻繁に食べられている食品であることは間違いない。
ケンミン食品は、現在はあまりテレビCMを流さなくなった。しかし、かつてはユニークなCMで宣伝することでも知られていた。
猫が不気味に鳴く薄暗い路地で、しゃがんだ男の子と女の子が「お母ちゃん、ケンミンの焼ビーフンにピーマン入れんといてや。なぁ」とボソっとつぶやく劇画のCM。漫才師の宮川大助・花子の両氏が出演するCMもある。電話の受話器を取ったら「次のことを5人の人に伝えなさい。ケンケンミンミン、焼ビーフン」と何の前触れもなく突如電話の主から命じられて困惑する様を描いたCMなど、シュールなタッチで大きなインパクトを残した。
近年の宣伝手法はどうなっているのか。スーパーなどの弁当・惣菜コーナーで、「ケンミンのビーフン使用」というシールが貼られた調理済みビーフンをよく見かけるようになった。これは元々、中国などから輸入された、米の比率の低い安価なビーフンとは品質が違うとアピールするためのものだ。安全・安心を訴えるために、ローソンの店舗で始めた。
現在は、「ケンミンのビーフン使用」をうたうことで、売り上げがアップするので、さまざまなチェーンが採用している。
消費増税以降の売り上げ不振もあって、近隣のスーパーの弁当・惣菜コーナーを覗くと、「オタフクソース特製ソース使用」のロースカツサンド、「たいめいけん茂出木浩司シェフ監修」の海老グラタン、「第8回からあげグランプリ最高金賞 からあげの鳥しん監修」の骨なしもも唐揚げなど、有名メーカーの商品を使っていたり、有名店の監修を受けたりしていることをうたう商品が増えている。
「こういう素材を使っている」「こういうこだわりがある」などと百の言葉を連ねるより、ブランドを打ち出したほうが消費者には効くのだろう。ケンミン食品のビーフンも、こういったトレンドに乗っている。
また、19年からJ1リーグ「ヴィッセル神戸」のスポンサーの1社になっており、イベントで選手の写真を袋に印刷したビーフンを無償でファンに提供して喜ばれている。継続すればサッカーファンに浸透し、大きな力となるだろう。
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