同一労働同一賃金が招く“ディストピア”とは?――「だらだら残業」だけではない、いくつもの落とし穴:短時間勤務者には痛手?(2/5 ページ)
2020年から開始する「同一労働同一賃金」。期待を集める一方で、「だらだら残業」を助長したり、短時間で働く人の負担になったりと、さまざまな「落とし穴」も潜んでいるという。しゅふJOB総研所長を務め、労働問題に詳しい川上敬太郎氏が斬る
「同一労働同一賃金」が働く主婦を苦しめる
例えば、仕事と家庭の両立を希望する“働く主婦層”の多くは短時間勤務希望者なので、他の社員よりも早く帰ることになります。しかしながら、早く帰るから必ずしも働きが不十分だ、とは言い切れません。
働く主婦であるCさんが企画職として商品開発に従事している場合を考えてみましょう。短時間にさまざまな情報をインプットし効率的に検討を重ねたCさんのアイデアが、同じ企画職として毎日遅くまで残業していたDさんのアイデアを抑えて採用されたとしたらどうでしょうか。
同じ企画職として同一労働同一賃金を適用した場合、時給換算したCさんとDさんのベース給与は同じです。それだけでなく、毎日遅くまで残業していたDさんの給与の方が残業代の分、総額では高くなります。
仮にDさんが1日平均10時間、Cさんが5時間働いていた場合、同一労働同一賃金だと給与総額の差は倍以上になってしまうのです。理由は明白で、そこに「成果」の概念がないからです。つまり同一労働同一賃金とは、責任の程度や配置変更の範囲を含めて同じ「職務」だと見なされる限り、労働時間の長さが給与総額の多寡を決める働き方なのです。
もちろん、実際にはCさんが帰宅した後、電話応対などCさんとともに対処していた業務をDさんが1人でカバーしていた可能性はあります。そういった負担面は別途考慮する必要はあるかもしれません。しかし、少なくとも企画職として求められる部分においてはCさんの方が優れているはずです。
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