面談のコメントから「辞めそうな人」がここまで分かる――「短期離職者に悩む会社」の人材流出を止めたAIの力(1/5 ページ)
1年以内に多くの人が辞めていく――。そんなソラストの離職率大幅改善に貢献したAI活用法とは。
雇用した人材のおよそ4割が、1年以内に辞めてしまう――。
かつて、非常に高い離職率に悩まされていたのが、医療事務の受託サービスを営むソラストだ。少子高齢化のあおりを受けて人手不足が深刻化する中、医療系人材のニーズは高まる一方で、離職率の改善は同社にとって喫緊の課題となっていた。
そんな中、「1年未満で辞める人と、1年以上続く人の違いは何なのか。ITを使ってそれを分析し、適切な対応をすれば、離職率を下げられるのではないか」――と考えたのが、同社の人事総務本部でHR tech推進部の部長を務める菊池雅也氏だ。
同氏は、どんなプロセスで「医療事務の仕事に向いている人」を採用する仕組みを構築したのか。また、ITを使ったどんな方法で「辞めそうな人」を可視化し、ケアするようにしたのか――。離職率の改善に効果があった取り組みについて菊池氏に聞いた。
「1年未満で辞める人」と「辞めない人」の違いは
聞き手 編集部 後藤祥子: 離職率が高まることで、ソラストのビジネスにはどのような影響が出ていたのでしょうか。
菊池: 問題だったのは、サービス品質の低下につながるリスクが上がることでした。当社の場合、病院から役務を請け負うサービスなので、急に人が辞めると、引き継ぐ人が同じレベルに達するまで、同等のクオリティーを担保するのが難しくなります。
また、せっかく教育した人が短期間で辞めてしまうと、採用や教育、引き継ぎに掛けたコストがムダになってしまいます。採用を1つとっても、求人媒体への広告出稿料が掛かるだけでなく、採用担当者が面接するなどの工数がかかりますから、採用した人には長く働いてもらったほうがありがたいのです。加えて高い離職率は、企業のブランド力を低下させますから、良くないことばかりです。
―― どのようなプロセスで、離職率を下げる方法を考えたのでしょうか。
菊池: まず、「1年未満で辞めてしまう人」と、「1年以上続く人」の違いを調べるところからスタートしました。すると1年以内で辞める人は、労働条件が合わなかったり、家庭との両立が難しかったりするケースが多いことが分かったんです。あとは職場の人間関係ですね。
問題が労働条件にある場合は、「業務が忙しすぎる」「業務レベルについていけない」といった理由が多い。家庭との両立が理由だと、予想以上に子育てとの両立が難しかったとか、親の介護が忙しくなった――という理由で辞めていく人がいます。
この原因のいくつかは、会社が用意している制度を使ってもらうことで解決できると思うんです。必要なときに有給休暇や育児休暇、介護休暇をきちんと取得できるようにしたり、社員それぞれにキャリア開発のプランニングをしたり――といったことを徹底すれば変えられる部分も多い。
ただ、「業務が自分に合っていない」「人間関係がうまくいかない」という2点については、新しい取り組みが必要なのではないかと思ったのです。前者は「当社の社風や医療事務という仕事に対して適性がある人を採用する」ことで、後者は、「定期面談の際に辞めそうな予兆を察知してケアする」ことで解決できるのではないかと考え、この2点についてITを活用することにしました。
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