世界の有能人材が「日本を避ける」未来 元TBS記者の性暴行事件が及ぼす深刻な影響:世界を読み解くニュース・サロン(1/4 ページ)
ジャーナリストの伊藤詩織氏が元TBS記者の山口敬之氏に性的暴行を受けたと訴えた裁判で判決が言い渡された。この事件は海外でも多く報じられており、「男尊女卑」「独裁」という日本のイメージが強まっている。日本への不信感で有能な人材を遠ざけることになるかもしれない。
12月18日、ジャーナリストの伊藤詩織氏が元TBS記者の山口敬之氏に性的暴行を受けたと訴えた裁判で判決が言い渡され、東京地方裁判所は山口氏に330万円の賠償を命じた。
このニュースは日本のみならず、世界でも大きく報じられた。日本では、右や左のポジショントークに、フェミニストやブーマー(団塊世代で聞き分けのない人たちのこと)が入り乱れて議論を繰り広げているが、あえて筆者はこの事件でどの言い分が正しいのかを検証する気はない。
ただ世界的に見ると、日本発のニュースとしてこれほど大きく報じられているものはここのところなかったと言える。日産自動車前会長のカルロス・ゴーン被告が報酬の虚偽記載などの罪で逮捕された事件とまではいかなくとも、それに準ずるほどのインパクトを海外で与えていると言っていい。伊藤氏の写真は海外メディアでよく目にした。また日本を訪れる外国人が増えたことも、注目度が高かった背景にあるのかもしれない。
海外メディアの報道を客観的に見ると、論調は似通っている。一貫していると言ってもいいかもしれない。
その報じられ方は残念ながら、日本のイメージを悪化させていると言える。そして、国内外で外国人ビジネスパーソンに直接的な影響を与えることになるということは、あまり指摘されていない。
日産のゴーン被告が逮捕された際、身柄を長期拘束して自白を狙う捜査手法、すなわち「人質司法」について、海外で驚きをもって受け止められていた。日本在住外国人である知人も筆者との雑談で、「海外の優れたビジネスマンや幹部候補などが日本に来ようと思わなくなるかもね」と懸念していた。実際に当時は、メディアでもそう憂慮するコメントをするビジネスパーソンたちも少なくなかった。
ロイター通信も2019年2月、ゴーン被告の起訴を受けて、担当の弘中惇一郎弁護士のコメントを引用し、「弘中氏は『日本はうっかり行くと、とんでもないことになる。何をされるかわからない国』として『衝撃的な印象を世界に与えた』と指摘」と書いている。ゴーンが有罪だろうが無罪だろうが関係なく、外国人の扱いに批判が起きたのである。
そんなことからも、今回の伊藤氏のニュースが海外でどう報じられたのかを筆者は注視していた。このニュースが、日本のイメージにどんな影響を及ぼす可能性があるか、日本人としても知っておいた方がいい。ビジネスにも少なからず影響を及ぼすかもしれないからだ。
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