世界の有能人材が「日本を避ける」未来 元TBS記者の性暴行事件が及ぼす深刻な影響:世界を読み解くニュース・サロン(2/4 ページ)
ジャーナリストの伊藤詩織氏が元TBS記者の山口敬之氏に性的暴行を受けたと訴えた裁判で判決が言い渡された。この事件は海外でも多く報じられており、「男尊女卑」「独裁」という日本のイメージが強まっている。日本への不信感で有能な人材を遠ざけることになるかもしれない。
海外メディアはどのように報じているか
まず、海外メディアの論調を簡単にまとめるとこうなる。
伊藤氏はジャーナリストとしてのキャリアを進めるために山口氏に仕事について相談をお願いし、東京で食事に行った。すると酒を飲んで記憶を失い、気が付けば山口氏が滞在していたホテルでレイプされていた。彼女は、薬を盛られたと見ている。タクシーの運転手の目撃談があり、伊藤氏は意識が薄い中で最寄り駅に行くよう主張していたが、山口氏がホテルに行くよう指示したという。
山口氏は安倍晋三首相とも近い関係で、安倍首相について2冊の本を書いている。伊藤氏の告発により、山口氏は成田空港で逮捕されることになったが、直前で警察上層部からの指示により逮捕が取り消された。これについては、当の警察幹部が中止を指示したと認めている。
こうした流れで話をみると、日本では女性の立場が弱く、首相の仲間ならば、口添えによってレイプ事件からも救ってもらえるという印象を持つ。これらの話が事実だとすれば、冷静に見ると日本は「男尊女卑」「独裁」といったイメージが容易に浮かぶような国なのかと思ってしまう。
このケースは、米国で17年から大問題になったハリウッドの大物プロデューサー、ハービー・ワインスタイン氏のセクハラ問題とも重なる。ワインスタイン氏は結局、レイプや性的暴行の罪で有罪になっている。世界的な大ニュースであり、その後も、これをきっかけとしていろいろな業界で次々と大物のセクハラ問題が浮上し、「#MeToo」運動が広がるきっかけにもなった。
米国で人気のニュースサイト「デイリー・ビースト」は「伊藤詩織の苦境は世界的なニュースになっており、英公共放送のBBCでドキュメンタリー『Japan’s Secret Shame』として取り上げられている。その理由は、日本では性的暴行の疑惑で被害者が表に出てくることは他の国よりも珍しいからだ」と報じている。
また世界的にも影響力の強いワシントン・ポスト紙などは、今回のレイプ事件では、山口氏に対する警察当局による逮捕中止と、検察官による審理拒絶があったために、安倍首相などとのコネによって山口氏が守られているのではないか、と指摘している。
関連記事
- 人ごとではない? 「セックスパット」駐在員のとんでもない行動
「セックスパット・ジャーナリスト」に関する米雑誌記事が物議に。特にアジアで、駐在している欧米のジャーナリストがひどいセクハラを行っているという内容だ。なぜ海外でセクハラしてしまうのか。日本のビジネスパーソンも人ごとではない。 - 海外でも議論噴出 なぜ「高齢ドライバー」の運転を止められないのか
東京・池袋で発生した高齢ドライバーによる死亡事故。ドライバーは運転能力低下を認識していたのに、なぜ運転を続けてしまったのか。私たち自身が責任を持って、高齢ドライバーへの向き合い方を考える必要がある。 - スーツ姿のビジネスマンが「時代遅れ」になる日
米金融大手ゴールドマン・サックスが社内のドレスコードを緩めると発表した。米国企業では、職場の服装がカジュアル化しつつある。ビジネススーツが「過去の産物」となる日も遠くないかもしれない。 - 日本が狙われる ロシアのドーピング処分で暴れる「クマさん」の危険
ロシアが五輪などの大会から4年間追放される処分が決まった。このことは、私たちと「関係ない」で済まないかもしれない。東京五輪と日本企業が「クマさん」による非常に危険な脅威にさらされる可能性があるからだ。「クマさん」が何をするのかというと…… - 日韓関係悪化でも… サムスンが日本企業と組んで開発する「絶対安全なスマホ」
日韓関係が悪化する中、サムスン電子のグループ企業が日本のセキュリティ企業と組んで「セキュリティ特化型スマホ」を開発している。便利になるにつれて、サイバー攻撃の危険性が増しているスマホ。安全性を高める技術とはどのようなものなのか。 - 僕らのヒーローだったジャッキー・チェンが、世界で嫌われまくっている理由
香港アクション映画の象徴的存在、ジャッキー・チェンのイメージダウンが止まらない。隠し子である「娘」の振る舞いや、自伝で語られた「ダメ人間」ぶりなどが欧米やアジアで話題になっている。私たちのヒーローだったジャッキーに何が起きているのか。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.