動き出した1400キロのサイクリングロード 千葉から和歌山まで、壮大な計画の狙い:地域ビジネス、ここがカギ(2/4 ページ)
千葉県から太平洋岸を通り、和歌山県に至る全長約1400キロのサイクリングロードの整備が加速している。2020年を機に、サイクリング好きの外国人観光客を取り込むことが期待されているからだ。どのようなルートになるのだろうか。
どんなルートになる? サイクリングをシミュレーション
未完のサイクリングロードではあるが、スタート・ゴール地点が示されたので、実際に走るとどんなルートになるのか、推測も交えて手短にシミュレーションしてみたい。
ルートの東側から出発すると仮定。スタート地点は、千葉県銚子市の銚子駅周辺とすることが19年末に固まったばかりだ。構想段階では茨城県鹿嶋市とする案もあったが、銚子市内に落ち着いた。1日の走行距離を脱初心者の分岐点とされる100キロと仮定しても、走破するまで2週間かかる計算。長い。学生はともかく、社会人が長期休暇で一度に走りきるのは厳しいかもしれない。何度か小分けに休みを取って、挑む必要がありそうだ。
ともかく、銚子駅を背にして出発しよう。外房地域を時計回りに走り、千葉県富津市を目指す。到着したら自転車を降り、東京湾フェリーに乗り込む。自転車道であるにもかかわらず、ルートに海上国道が含まれているのだ。約40分かけて神奈川県横須賀市の久里浜に到着したら、そのまま湘南海岸を横目にこぎ続け、伊豆半島に向かおう。途中、熱海〜伊東間でルートは二手に分かれるため、半島を一周するか、山越えをするかの選択に迫られる。いずれにせよ、沼津周辺で再び合流し、静岡県の長い海岸沿いをひたすら走ることになる。静岡清水自転車道など整備された自転車道が続き、天気が良ければ左手に遠州灘、右手には富士の高嶺が望めそうだ。
愛知県に入れば、旅も中盤戦。渥美半島の先端部にあたる田原市の伊良湖から伊勢湾フェリーで三重県鳥羽市へ向かおう。約55分の船旅の後は、ひたすら紀伊半島を時計回りに進む。高低差もあり、疲労が蓄積した肉体に負担がかかりそうだ。本州最南端の和歌山県串本町の絶景が見えたら、長かった自転車旅行も佳境を迎える。同県田辺市、御坊市を通り過ぎ、ついにゴールの和歌山市の加太港に至る。
現状では未整備区間も多く、決して快適な旅とは言えないかもしれないが、極めて長距離ということもあり、走りがいはありそうだ。近畿地方整備局などが中心となり、この太平洋岸自転車道を、政府公認の国際水準の自転車道「ナショナルサイクルルート」に格上げしようという動きもある。20年までには少なくともロゴマークや標識を沿線で統一し、利用者が一目でルートを確認できるようにする計画だ。
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