動き出した1400キロのサイクリングロード 千葉から和歌山まで、壮大な計画の狙い:地域ビジネス、ここがカギ(3/4 ページ)
千葉県から太平洋岸を通り、和歌山県に至る全長約1400キロのサイクリングロードの整備が加速している。2020年を機に、サイクリング好きの外国人観光客を取り込むことが期待されているからだ。どのようなルートになるのだろうか。
島根では一畑電車とサイクリングを一緒に楽しむ
太平洋岸自転車道以外にも、自転車ツーリズムを盛り上げようとする取り組みは各地で静かに広がっている。
例えば、茨城県の霞ケ浦周辺に整備された「つくば霞ケ浦りんりんロード」(全長約180キロ)は近年、急激に整備や周辺施設の充実が進み、今後が期待されている。東京から約1時間というアクセスも強みにしており、土浦駅にはサイクリストをターゲットにした星野リゾートの新型ホテルも開業している。ほぼ駅ナカの好立地の上、自転車と一緒に泊まることができる。宿泊料金も1泊1万円未満の手頃な価格に抑えた。観光マップの作成やWebサイトの構築なども進めており、地元自治体も自転車を核にした観光を明確に打ち出し、支援に力を入れている。
意外な穴場は松江市だ。波の穏やかな宍道湖の湖面を眺めつつ、周囲を巡るコースが人気を呼んでいる。地元の一畑電車が、全区間で自転車持ち込みを終日可能としている点も面白い。全国的にも珍しい取り組みだ。
路線の始点に当たる松江しんじ湖温泉駅のすぐ目の前に、台湾の自転車大手、ジャインアントのサイクルショップが16年にオープンし、魅力向上に一役買っている。ショップで借りた自転車を電車に持ち込めば、乗り降りしながらのレール&サイクルによる沿線観光が楽しめる。筆者が19年秋頃に訪れた際は、雨天にもかかわらず、外国人観光客が宍道湖畔のサイクリングを楽しんでいた。地元で長年乗務しているというタクシー運転手の男性は「ここ数年、自転車旅行などを楽しむ欧米系の外国人観光客がずいぶん増えてきた」と歓迎していた。
隣の鳥取県でも、米子空港でサイクル施設の整備を着実に進めている。専用駐輪スペースの設置やサイクリスト用のマップ配布などを行っている。
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