マネーフォワードがSaaSビジネスのKPIを開示 19年11月決算
SaaSビジネスでは、顧客ごとに業績を分析するユニットエコノミスクを利用する。いったんユーザーを獲得すれば継続的に売り上げが生まれるSaaSモデルの特性から、企業全体の売り上げやコストというよりも、顧客あたりの、獲得費用、売上高(ARPA)、解約率(チャーンレート)によって事業を評価する仕組みだ。
マネーフォワードは1月14日、2019年11月期の決算を発表した。売上高は前年比56%増の71億6000万円、営業利益は昨期から14億5000万円悪化し24億4600万円の赤字だった。2年後の21年11月期にEBITDAベースでの黒字化を目指す方針で、そこまでは投資を進め売上の拡大に注力する。
20年11月期も、売上高見通しは55〜60%成長の111〜115億円、EBITDAベースの赤字幅は19年の22億6000万円の赤字に対して、19〜28億円の赤字を想定する。
SaaSビジネスのKPIを開示
同社の事業の主力は、売り上げの約6割を占める法人向けSaaS事業だ。今回、この事業のKPIを開示した。
【訂正:1月15日20時40分。初出で、法人向けSaaS事業が売り上げの76%と記載していましたが、これはMoney Forward X/Financeも含むB2B売上高全体の数字でした。法人向けSaaS事業の売上高比率は、正しくは約6割となります。お詫びし訂正いたします。】
SaaSビジネスでは、顧客ごとに業績を分析するユニットエコノミスクを利用する。いったんユーザーを獲得すれば継続的に売り上げが生まれるSaaSモデルの特性から、企業全体の期間損益よりも、顧客あたりの、獲得費用、売上高(ARPA)、解約率(チャーンレート)によって、事業を評価する仕組みだ。
マネーフォワードの法人向け事業の各KPIは、ARPAが5万9248円、解約率が1.2%(新プラン導入による影響を加味したものは1.8%)だった。また、新規顧客獲得費用に対する売上高の増加を表すセールス効率性は1.6倍だった。
ARPAはこれまで15年11月期の3万円から緩やかに上昇してきたが、新プランの導入によって5万9200円へと大幅に増加した。「ARPAが上がっていく要素はまだある。ラインアップの拡充、ユーザー数課金のサービスは、顧客の企業規模が大きくなるにつれて金額が上がる。またSaaSプラットフォーム事業の開始。この3点がARPAが伸びる要素」だと、辻庸介社長は説明した。
SaaS型ビジネスによって生まれるストック型収入は、第4四半期時点で前年同期比64%増となった。また、同一の課金顧客からのストック型収入が、前期末に比べてどう変化したかを表すネットレベニューリテンション(売上継続率)は129%と増加した。
「ネットレベニューリテンションは、既存の顧客の売上がどれだけ伸びたかを示す。単価(ARPA)が上がってきた場合は売上継続率はプラスに働く。アップセル、クロスセルによってお客さんに複数のサービスを使ってもらい、ARPAが向上した。そして解約率が低いと売上継続率が高くなる」(辻氏)
SaaS業界では、19年末に競合となるfreeeが上場した。「SaaSの会社が上場しているので認知度も上がり、業界全体としてはプラス。Fintech業界もなかなか上場が出てこなかったが、freee上場で業界全体が盛り上がる」と辻社長は話した。
関連記事
- freee“10倍値上げ”問題から考えるサブスクエコノミーの落とし穴
今週上場したfreeeの波紋が後を引いている。freeeが提供する法人向け会計サービス内容の改定が今月上旬に発表され、これが実質“10倍値上げ“になるとSNS利用者の間で解釈されたためだ。 - freee上場 クラウド会計に続くビジョンを話す
クラウド会計ソフトを提供するfreeeが12月17日、東証マザーズに上場した。公開価格は2000円で、初値は2500円となり、時価総額は約1200億円。 - マネーフォワード、仮想通貨取引所開設を断念
マネーフォワードは4月15日、仮想通貨関連事業への参入延期を発表した。子会社のマネーフォワードフィナンシャルを通じて、取引所および交換所の参入を進めていたが、実質的に断念。 - 10億円でクラウド会計乗り換え促進 マネフォがキャンペーン
消費税増税に伴う軽減税率制度開始をチャンスと捉え、クラウド会計サービスを提供するマネーフォワードは、新規利用企業に総額10億円を支給するキャンペーンを始める。 - 「シリコンバレー・イズ・カミング」から始まったフィンテック マネーフォワード瀧氏に聞く
すっかり日本でも定着したフィンテック(FinTech)という言葉。これは、どのようにして始まり、どんな文脈の中で動いているのか。金融庁の「フィンテック・ベンチャーに関する有識者会議」メンバーでもある、マネーフォワードの瀧俊雄取締役に、フィンテックの潮流を聞いた。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.