“世界で最も心地よい”スニーカーは、日本でも爆売れするか:世界を読み解くニュース・サロン(4/4 ページ)
「世界で最も心地よいシューズ」と評されたスニーカーブランド「オールバーズ」が日本初上陸した。環境への配慮や履き心地を追求したシューズが、なぜここまで評価されているのか。その背景には、明確なビジネス戦略があった。
最も重視したのは「フィードバック」
こういう状況を認識した上で、もう1つ同社の成功に重要だったのは、「フィードバック」を大事にしたことだとブラウン氏は述べている。消費者との関係を築くことで、ユーザーから商品についてのフィードバックを得ることができる。彼らはとにかくフィードバックに耳を傾けて、改良に改良を重ね、試作と失敗を繰り返したという。
現在でもサンフランシスコで100人ほどのチームを組んで、毎週各地から得たフィードバックなどの情報を報告し、検討している。お客の声が全て、という認識だそうだ。サーベイを行った結果や、SNSでアップされるメッセージも欠かさずチェックする。店舗のある街に行く場合には、メールを出すなどして顧客と会う機会を作る。また顧客データの分析も徹底して行っているらしい。
その一方で、やみくもに意見を聞きすぎるのも問題であると、ブラウン氏は指摘する。「多くのフィードバックは無視しなければいけない」とし、自分たちの「譲れない事項」に関係のないものは無視することも大事だという。
ブラウン氏は「こう説明すると、簡単に一晩で成功したかのようにも聞こえるだろうが、実はそれまでに6年間、懸命に取り組んだ。ウール製シューズが『素晴らしいアイデア』と言われるまで、とても『ダメなアイデア』だった時間が長かった」と言い、「人にどんな仕事をしているか説明するのに、(恥ずかしくて)いつもドキドキしていた」と語っている。
それが今では、ニュージーランドの首相が、オーストラリアの首相と会う際のお土産として、オールバーズのシューズをプレゼントするまでになったという。「オールバーズ外交」である。ニュージーランドが誇るブランドに成長した。
しかも、SDGs(持続可能〈サステナブル〉な開発目標)が叫ばれる時代にがっちりとフィットするシューズでもある。日本ではまだオープンしたばかりだが、日本人がどのようにこのシューズを受け止めるのかが見ものである。
筆者プロフィール:
山田敏弘
元MITフェロー、ジャーナリスト、ノンフィクション作家。講談社、ロイター通信社、ニューズウィーク日本版に勤務後、米マサチューセッツ工科大学(MIT)でフルブライト・フェローを経てフリーに。
国際情勢や社会問題、サイバー安全保障を中心に国内外で取材・執筆を行い、訳書に『黒いワールドカップ』(講談社)など、著書に『ゼロデイ 米中露サイバー戦争が世界を破壊する』(文藝春秋)、『モンスター 暗躍する次のアルカイダ』(中央公論新社)、『ハリウッド検視ファイル トーマス野口の遺言』(新潮社)、『CIAスパイ養成官 キヨ・ヤマダの対日工作』(新潮社)がある。テレビ・ラジオにも出演し、講演や大学での講義なども行っている。
お知らせ
新刊『サイバー戦争の今』(KKベストセラーズ)12月24日発売!
米国、中国、ロシア、北朝鮮、韓国、イラン……。日本は国外のサイバー脅威から狙われていることをそろそろ自覚すべきではないでしょうか。
間もなく5G(第5世代移動通信システム)が到来し、IoTやデジタルデバイスなどのネットワークが爆発的に広がれば、私たちは現実社会とサイバー世界の境界がほとんどなくなる世界に暮らすことになります。新しいテクノロジーによって便利さとエキサイトメントを享受できる一方で、サイバー攻撃のリスクは今と比較できないほど高まります。世界の政府系、非国家系サイバー組織、またマフィアなど犯罪組織の活動の場は、おのずとサイバー世界に移るのです。
いや、その流れはもうとっくに始まっています。例えば日本でも、京アニ襲撃犯がサイバーを駆使し、一方でJALは大金をだまし取られている。インフラも侵入されているのです。本著が、その実態にまだ気付いていない日本人に、サイバーセキュリティについて考えてもらうきっかけになればと願っています。
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