小泉進次郎氏が叫ぶ「空気を変える」はズレている 男性育休が増えない真因:河合薫の「社会を蝕む“ジジイの壁”」(2/5 ページ)
小泉進次郎環境相の「育休宣言」が話題になっているが、「空気を変える」と政治家が連呼することには違和感がある。確かに育休を取りづらい空気はあるが、それだけではない。男性が育児をするための「時間」を増やす政策が最も必要なのではないか。
そもそも「空気」とは何なのか
早速ですが、そもそも「空気」とは何なのでしょうか?
山本七平氏の名著『「空気」の研究』は、私も随分と学ばせていただきましたが、そこには次のような説明があります。
それは(空気とは)非常に強固でほぼ絶対的な支配力をもつ「判断の基準」であり、それに抵抗する者を異端として「抗空気罪」で社会的に葬るほどの力をもつ超能力である。
なるほど。子どもがいない25〜44歳の既婚者・未婚者のうち、子どもが欲しい気持ちがある・あった男性に「今後、子どもが生まれた場合に、育児休業を取得したいですか?」と聞いたところ、「ぜひ育児休業を取得したい」と「できれば育児休業を取得したい」を合わせると、実に7〜8割が育休を希望しています(明治安田生活福祉研究所「2018年 25〜44歳の子育てと仕事の両立」より)。
こんなにも多くの人たちが育休を取りたいと考えているのに、育休取得率が6.16%と絶望的に少ないのは、「空気=社会のまなざし」が影響していることを、私は否定しません。
実際に、私がインタビューした人たちの中にも、
「育休? まさか遊びたいだけじゃないよな?」
「戻ってきたときには席はないと思っていたほうがいいぞ」
「女性社員が増えて、育休だ、時短だって現場はてんやわんやなのに、育休取るって? どういう神経してるんだよ」
「あそこのダンナさん、育休だって。結構なご身分ね〜」
など、社内だけでなく、ご近所さんからも、白い目で見られた経験を話してくれた人たちは少なくありませんでした。
が、問題はここからです。
関連記事
- 賃金は減り、リストラが加速…… ミドル社員を脅かす「同一労働同一賃金」の新時代
2020年は「同一労働同一賃金」制度が始まる。一方、厚労省が示した「均衡待遇」という言葉からは、正社員の賃金が下がったり、中高年のリストラが加速したりする可能性も見える。そんな時代の変わり目には、私たち自身も働き方と向き合い続ける必要がある。 - 「また違法残業」の電通 過労死のリアルを理解しないトップに問う“責任”
長時間労働削減に取り組んでいたはずの電通が、また違法残業で是正勧告を受けていたと報じられた。長時間労働が死に直結するというリアリティーを社員が持てないのはトップの認識の甘さ。「過労死」という言葉の歴史と重みを考えれば、「また違反」はありえない。 - 「3年で30万人」は絵空事か 就職氷河期世代の雇用対策に欠けた、深刻な視点
兵庫県宝塚市が実施した、就職氷河期世代対象の正規職員採用では、1635人が受験して4人が合格した。政府はこの世代を「3年で30万人」正規雇用することを掲げるが、どうやってそんなにも多くの人を救えるのか。最大の問題は低収入による“リソースの欠損”だ。 - 月13万円で生活できるか 賃金を上げられない日本企業が陥る悪循環
米フォードの創業者はかつて賃金を上げて生産性を高めた。現代の日本では、海外と比べて最低賃金は低いまま。普通の生活も困難な最低賃金レベルでの働き手は増えている。従業員が持つ「人の力」を最大限に活用するための賃金の適正化が急務だ。 - 「1カ月の夏休み」は夢? 日本人の“有給の取り方”がズレている、歴史的背景
月曜を午前半休にする「シャイニングマンデー」。経産省内で検討していると報じられたが、そんな取り組みは「無駄」。日本人は、世界では当たり前の「有給休暇をまとめて取る」こともできていないからだ。なぜできないのか。歴史をさかのぼると……。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.