連載
ゴーン国外逃亡で考える、日産前社長の西川氏が逮捕されない理由と検察の劣化(前編):専門家のイロメガネ(3/6 ページ)
ゴーン氏の会見後も毎日のように新しい動きが報じられたが、そもそもの発端を理解している人は少ないだろう。世間では「給料をごまかして逮捕された挙句に国外逃亡したとんでもないヤツ」と認識されていると思うが、実際はそのような単純な話ではない。なぜゴーン氏が国外逃亡を選んだのか、なぜ西川氏と検察もまた問題があると断言できるのか、複雑に絡んだ事件を整理してみたい。
ゴーン氏が国外逃亡を決めた3つの理由
ゴーン氏の弁護団を務める高野隆弁護士は、国外逃亡を非難しつつもゴーン氏が逃げることも理解できる、とその心情を自身のブログでつづった。ゴーン氏の弁護人である以上、かなり差し引いて読む必要はあるが、実質的に自白を強要されたこともゴーン氏は会見で主張している。
これが事実であれば、取り調べが言葉通りの「取り調べ」ではなく、有罪を認めるように迫る強要であり、証拠を元に有罪・無罪を裁判所が判断する司法の仕組みを踏み外している。しかもそれは今に始まったことではなく、昔から散々批判されてきた問題だと多数の弁護士が指摘する。
筆者は弁護士ではないので司法に関してはこれ以上述べないが、高野弁護士のブログではゴーン氏が日本国内で公正な裁判を受けられるのか? と不公平な扱いに不満を繰り返し訴えていたとある。ゴーン氏がここまで不満を訴えている理由は、大きく分けて3つある。
逮捕のタイミング、逮捕容疑、そして西川前社長が逮捕されていないことだ。
関連記事
- 報酬5億円でゴーンの暴走を放置した西川前社長の責任(中編)
メディアでは一斉にゴーン批判の嵐が巻き起こったが、仮に暴走していたのであればそれをとめる役目を負うのは役員であり、その最高責任者は日産の代表取締役社長兼CEOの西川氏にほかならない。ゴーン氏が犯罪を行って逮捕・起訴されたのであれば、西川氏もセットで逮捕されるべきで、西川氏が逮捕されないのであればゴーン氏の逮捕もあり得ないはずだ。 - ゴーン氏が「悪者」で西川社長が「男らしい」というおかしな風潮 後編
ゴーン氏逮捕については、センセーショナルな事件であったことや、私的流用や公私混同の話がゴシップネタとして面白おかしく報じられたことから、ゴーン氏一人が注目を集める格好となった。しかし企業としての責任にフォーカスすると、どう見えるだろうか? - ゴーン氏が「悪者」で西川社長が「男らしい」というおかしな風潮 前編
ゴーン氏逮捕の真実は今後明らかにされていくだろうが、私的流用が多々あったことは間違いなさそうだ。しかし、そのような振る舞いをとめることができなかった役員にも責任がある。西川氏らほかの役員の責任はどう捉えたらいいのだろうか? - 「ほら、日本ってめちゃくちゃでしょ」 ゴーン氏の逆襲をナメてはいけない
カルロス・ゴーン氏が、会見を開く予定だ。「大丈夫でしょ。悪いのは彼なんだし」「すぐに逮捕して、日本に戻せ」といった声が聞こえてきそうが、大きな声をあげればあげるほど、日本にダメージを及ぼすリスクがあるのだ。どういうことかというと……。 - ゴーン妻の“人質司法”批判を「ざまあみろ」と笑っていられない理由
日産自動車前会長のカルロス・ゴーン被告の逮捕・勾留に関して、キャロル夫人がいわゆる「人質司法」を批判した書簡を人権団体に送った。刑事司法制度において「自白偏重主義」を貫いてきた日本は、海外からどんな国であると認識されているのか。 - 資本主義経済に対するテロ行為 ゴーン問題の補助線(1)
元日産自動車会長、カルロス・ゴーン氏の逮捕を受けて、世の中は大騒ぎである。日仏経済界や政治レベルでの懸案にまで発展しかねない様相を呈している。今回はこの事件について整理してみたい。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.