ゴーン国外逃亡で考える、日産前社長の西川氏が逮捕されない理由と検察の劣化(前編):専門家のイロメガネ(4/6 ページ)
ゴーン氏の会見後も毎日のように新しい動きが報じられたが、そもそもの発端を理解している人は少ないだろう。世間では「給料をごまかして逮捕された挙句に国外逃亡したとんでもないヤツ」と認識されていると思うが、実際はそのような単純な話ではない。なぜゴーン氏が国外逃亡を選んだのか、なぜ西川氏と検察もまた問題があると断言できるのか、複雑に絡んだ事件を整理してみたい。
謎のタイミングで逮捕されるゴーン氏
ゴーン氏はレバノンに逃亡するまでに4回も逮捕されている。2回目以降はいずれもおかしなタイミングばかりだ。
1回目の逮捕は退職金の虚偽記載とされている。
有価証券報告書と呼ばれる、会社の決算情報などを記載したもので、年に一回必ず公表される書類がある。ここにゴーン氏が受け取る退職金が記載されていなかった、つまり虚偽記載の容疑だ(金融商品取引法違反)。
2回目も同じ容疑で拘留中に再逮捕された。虚偽記載の期間は1回目の逮捕が11〜15年、2回目が16〜18年だ。同じ容疑で二度に分けた点について、勾留期間の引き伸ばし作戦だと当初から批判されていた。いわゆる「人質司法」だ。
そして2回目の逮捕では勾留の延長が認められなかった。国内外の人質司法への批判が影響したといわれているが、延長がなければこの日に保釈されるだろうという予定の日に、3回目の逮捕が行われた。
保釈されると思ったら再度の逮捕で結果的に勾留延長と同じ状況になった……。このタイミングで3度目の逮捕は勾留延長が目的ではないのか? とゴーン氏が不信感を募らせたことは間違いない。
そして一旦は保釈され、Twitterのアカウントを開設したその翌日に4回目の逮捕が行われた。ゴーン氏は記者会見を行うと宣言していたが口封じを目的としたかのように、結局は会見前の逮捕となっている。
【訂正:1月31日1:30 4回目の逮捕は当日ではなく翌日でした。お詫びし訂正いたします。】
レバノンで行われた会見は、日本でも話せた内容だという指摘も多数あった。実際、新しい事実はなかったと書いた通りだが、現実にそれをやろうとしたら逮捕された。これが偶然といえるのか。ゴーン氏がそのように考えても全く違和感はない。
1、2回目はもちろん、3、4回目の逮捕容疑も、後述するがいずれも正当性があるか微妙なものだ。なによりも勾留の延長、発言を阻止するタイミング、いずれもゴーン氏にダメージを与える時期を狙って逮捕が行われているように見える。犯罪を犯してるのだから当たり前、というのは完全な筋違いだ。推定無罪の原則から大きくズレている。
逮捕されたことに加えて逮捕のタイミングが明らかにおかしい……。日本の司法に対するゴーン氏の不信は、これがスタート地点となっている。
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