『嫌われる勇気』著者、アドラー心理学の第一人者が語る組織論「部下を思い通りに動かそうとするのは間違い」:『嫌われる勇気』著者の仕事術(後編)(4/4 ページ)
国内累計208万部、世界累計485万部の大ヒットを記録している『嫌われる勇気』。続編の『幸せになる勇気』との合計部数は世界で600万部を突破し、21世紀を代表するベストセラーになっている。この二部作を、仕事の悩みを解決するために読みたいと考える人は、少なくないだろう。後編では、経営者や管理職向けにアドラーの思想を正しく読み解いてもらい、部下をマネジメントする上でのヒントを提示してもらった。
働いて幸福と思える組織を作れるか
――ということは、若い社員が次々と辞めていくのは、当人たちのせいではないということでしょうか。
経営者は、社員が働いていて幸福だと思える組織を作る必要があります。利潤を追求するだけでは十分ではないのです。何らかの形で他者に貢献している感覚を持てないような仕事を、上司は部下にさせてはいけません。
でも実際は、利潤の追求が最優先されます。仕事の本質は顧客に幸せを売ることです。利潤の追求は仕事である以上必要ですが、顧客が幸せになる仕事でなければ仕事をしていて楽しいと思えないでしょう。営業成績を上げることだけに汲々(きゅうきゅう)とする職場では働きがいがない。そう思って、辞めていく人がいます。
――入社して3年くらいで辞めると、「これまで教育のためにお金をかけてきて、これからというときなのに」とこぼす経営者もいると思いますが。
それも社員が悪いのではなく、経営者や組織に問題があるからだと考えた方が問題解決の糸口が見えます。「いまどきの若いものは」というようなことしか考えられない上司には、部下がなぜ辞めていくのか理解ができないのでしょう。
だから、組織はやりがいのある仕事を提供しないといけませんし、加えて賃金を上げていくことも必要です。賃金が上がることは、経済的に余裕が出る効果もありますが、自分が会社に貢献していると感じることにもつながります。社員がそう思える企業が伸びていくのではないでしょうか。
――そのためにも、どのようなことが重要になりますか。
組織の中での対人関係ですね。『嫌われる勇気』では対人関係は悩みの源泉であり、不幸の源泉でもあると書きました。他方で、生きる喜びや幸福も、対人関係の中でしか得ることができません。対人関係の在り方をきちんとおさえたら、その人はどんな対人関係でもきちんとできるのがアドラー心理学の立場です。
つまり、対人関係に入っていくことで、人は幸せになれるのです。『幸せになる勇気』では、どうすれば対人関係の中に入っていく勇気を持てるかについて書いています。対人関係をよくしたい方、幸福になりたい方、生きる喜びを感じて生きていたいと思う方は、ぜひ読んでほしいと思います。
著者プロフィール
田中圭太郎(たなか けいたろう)
1973年生まれ。早稲田大学第一文学部東洋哲学専修卒。大分放送を経て2016年4月からフリーランス。雑誌・webで警察不祥事、労働問題、教育、政治、経済、パラリンピックなど幅広いテーマで執筆。「スポーツ報知大相撲ジャーナル」で相撲記事も担当。Webサイトはhttp://tanakakeitaro.link/
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