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コンビニが「命を削る現場」に 25年前に指摘された“やりがい搾取”の危険性:河合薫の「社会を蝕む“ジジイの壁”」(4/5 ページ)
コンビニの24時間営業の是非が議論になっているが、重視すべきなのは利益が出るかどうかではなく、オーナーたちの厳しい働き方をどのように変えるか。25年前、コンビニがまだ新しい業態だったころにも“危険性”は指摘されていた。その内容とは……
【精神健康】
- 雇用店長はオーナー店長より心身の不調を訴えていた
- 特に「目が疲れる」「かぜをひきやすい」「根気が続かない」「好きなことでもやる気がしない」「生活にはりあいを感じない」の項目では、雇用店長で不調を訴える人が多く、特に精神症状で不調を訴える人が著しく多かった
- 一方、オーナー店長は、多くの項目で低い傾向が認められた。ファミレスやホテルで働く人たちとの比較でも低い値を示しており、相対的にストレスが少ないことが明らかになった
以上のことから、オーナー店長と雇用店長では、ストレスの度合いが異なり、その理由は以下のことが考えられる。
- 雇用店長は相対的に年齢が若く、その経験に比して重い責任が課せられている可能性
- 雇用店長はオーナー店長とは異なり、社員としての付加的な業務が与えられている可能性
- 雇用店長はオーナー店長とは異なり、営業成績に一定のノルマが課せられている可能性
特に精神的な自覚症状の訴えが強いことから、雇用店長に加重されている負担は、肉体的なものではなく、精神的なものであることが予想される。
25年前の調査が予感させる「今」の窮状
以上の結果を受けて、報告書では次のような見解をまとめています(概略)。
「今回の調査から、店長の仕事は、勤務時間が長く、休日が少ないといえる結果が得られたが、能力発揮と判断の裁量度という点で、オーナー店長たちが満足していることは強調されてよい。オーナー店長が脱サラの受け皿になっている点から考えると、彼らの期待が裏切られなかったと解釈してよいであろう。
現時点で利用できる資料を検討した限りにおいては、コンビニエンス・ストア経営に伴うストレスの強さは、特にオーナー店長では、十分に耐えられる程度にあるといえそうである。
まだ歴史の浅い業界だけに、問題に対する柔軟な対応が期待できるが、逆に対応を間違えると、業界全体の発展を疎外することにもなりかねない危険性をはらんでいる」
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