コンビニが「命を削る現場」に 25年前に指摘された“やりがい搾取”の危険性:河合薫の「社会を蝕む“ジジイの壁”」(5/5 ページ)
コンビニの24時間営業の是非が議論になっているが、重視すべきなのは利益が出るかどうかではなく、オーナーたちの厳しい働き方をどのように変えるか。25年前、コンビニがまだ新しい業態だったころにも“危険性”は指摘されていた。その内容とは……
要するに、「長時間労働で休みもないけど、仕事の満足感は高いんだよ〜。でも、オーナー店長は経営者だからいいけど、オレらはしょせん会社員。なんやかんや上からうるさく言われるし、雑用も多いし、ストレスたまっちゃって、体調悪いし、やる気も出ないんだよなぁ〜」ということが明かされたのです。
これらの結果を受け、コンビニ業界がどんな施策を講じたかは分かりません。しかし、ここで得られた結果と問題点は、「今」を予想させるもので、本部のやりがい搾取が「今」の窮状を生んだといっても過言ではありません。
つまり、件の報告書には、「対応を間違えると、業界全体の発展を疎外することにもなりかねない危険性をはらんでいる」とあるにもかかわらず、その危険性を排除しないまま、店舗数は爆発的に増えた。そして、25年たった今、年中無休は、働く人の健康を脅かす“凶器”となってしまったのです。
河合薫氏のプロフィール:
東京大学大学院医学系研究科博士課程修了。千葉大学教育学部を卒業後、全日本空輸に入社。気象予報士としてテレビ朝日系「ニュースステーション」などに出演。その後、東京大学大学院医学系研究科に進学し、現在に至る。
研究テーマは「人の働き方は環境がつくる」。フィールドワークとして600人超のビジネスマンをインタビュー。著書に『他人をバカにしたがる男たち』(日経プレミアシリーズ)など。近著は『残念な職場 53の研究が明かすヤバい真実』(PHP新書)、『面倒くさい女たち』(中公新書ラクレ)。2019年5月、新刊『他人の足を引っぱる男たち』(日経プレミアシリーズ)発売。
関連記事
- 「27年休暇ゼロ」「ドラッグストア怖い」 コンビニオーナーの苦しい実態が経産省の調査で明らかに
経産省がコンビニオーナーに対して大規模な調査を実施。調査結果からは過酷すぎる勤務実態が浮き彫りに。競合としてドラッグストアの存在を挙げるオーナーもいた。 - 脱24時間で息吹き返したセブン加盟店、密着ルポで迫る「時短営業の意外な現実」
コンビニ業界に脱24時間化の激震が走る。最大手・セブンのとある時短実施店に筆者が密着ルポ。意外な実像から浮かび上がる「コンビニの未来像」とは。 - セブン「1000店閉店、移転」はドミナント戦略の限界か
セブン-イレブンが2019年下期以降、1000店舗を閉店・移転すると発表した。街中にコンビニがあふれているので、「そりゃあそうだろう。ちょっと減らしたほうがいいよ」と思われたもしれないが、筆者の窪田氏は違う見方をしている。それは……。 - 「また違法残業」の電通 過労死のリアルを理解しないトップに問う“責任”
長時間労働削減に取り組んでいたはずの電通が、また違法残業で是正勧告を受けていたと報じられた。長時間労働が死に直結するというリアリティーを社員が持てないのはトップの認識の甘さ。「過労死」という言葉の歴史と重みを考えれば、「また違反」はありえない。 - 賃金は減り、リストラが加速…… ミドル社員を脅かす「同一労働同一賃金」の新時代
2020年は「同一労働同一賃金」制度が始まる。一方、厚労省が示した「均衡待遇」という言葉からは、正社員の賃金が下がったり、中高年のリストラが加速したりする可能性も見える。そんな時代の変わり目には、私たち自身も働き方と向き合い続ける必要がある。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.