100円ショップ界屈指の高利益率を誇るセリア “安くておしゃれ”の裏に隠れた緻密な戦略とは:営業利益率は競合の数倍(2/3 ページ)
「安くておしゃれ」を武器に人気を拡大しているセリア。ただ安さを重視した「薄利多売」ではなく、営業利益率は競合と比較しても高い。裏側にはどんな戦略があるのだろうか。
セリアの「強み」とは
セリアといえば、100円なのに100円に見えない「高見え」する商品をそろえるとともに、トータルコーディネートされたおしゃれな空間を武器に支持を拡大しているイメージが強い。とはいえ、単に安さを追って薄利多売し、むやみやたらとおしゃれな空間をつくっているのではない。
薄利多売ではない証拠として、冒頭でも述べたように、セリアの利益率は競合と比較してとても高い。ダイソーを運営する大創産業は非公表だが、業界3位のキャンドゥは19年11月期決算での売上高営業利益率は「1.7%」。業界4位のワッツは19年8月期決算において、同「1.4%」。一方、セリアは同「9.8%」。競合する百均と比較しても高い数値だが、「小売業」という産業の中で見てもこの数値は“優良”だといえる。経済産業省が1月に発表した「2019年企業活動基本調査速報−2018年度実績−」によると、小売業全体の売上高営業利益率は「2.6%」。単価が100円と安価な商品で、セリアは高利益率をどう維持しているのだろうか。その裏側には、賢い経営戦略が隠れている。
まず、セリアでは販売商品の約9割をメーカーと共同開発している。「わざわざ作ってから売り込むのはメーカーさんにとって非効率。また、実際に生産する前に話を持ってきていただければ、ある程度のクオリティーコントロールもこちらでできる」と田中氏は話す。また、店舗での販売データなどを提供することで、メーカー側が過剰に生産し、在庫を抱えてしまうコストも事前に解消しているという。その結果、高品質な商品を安価に開発できている。
在庫管理には業界内で先んじてデータを駆使している。競合のキャンドゥは06年、ワッツは15年にPOSレジを導入したのに対しセリアでは04年に「リアルタイムPOSシステム」を導入。その後も発注支援システムを構築するなど、これまで現場頼みだった発注や在庫管理などにテコ入れを行った。これにより、売れる商品を重点的に陳列できるようになった。また、接客や品出しといった店舗業務に従業員が注力できるようにもなった。さらに、出勤しているのに暇な人が出ないよう「シフト管理」にもデータを活用し、販売管理費をコントロールしている。
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