積み立てだけでなく取り崩しも自動化 楽天証券が始めた投信定期売却機能の狙い(1/2 ページ)
資産の構築のために定期的にお金を投資に回す、いわゆる積み立て投資の考え方は、かなり一般に普及してきた。一方で、形成した資産をどう使うかの話はまだほとんど聞かない。楽天証券が始めた投信定期売却機能は、自動的に資産を売却して取り崩す、積み立ての逆を行う機能だ。
資産の構築のために定期的にお金を投資に回す、いわゆる積み立て投資の考え方は、かなり一般に普及してきた。一方で、形成した資産をどう使うかの話はまだほとんど聞かない。老後資産2000万円問題といわれるように、積み立てて形成した資産は、老後になったときに今度は取り崩して使っていくことになる。
こうした問題を解決する機能の提供が始まった。楽天証券が2019年12月29日から開始した、「投信定期売却サービス」だ。持っている投資信託を、自動的に毎月一定の方法で取り崩して現金にしてくれる。まさに積み立ての逆の機能だ。
預かり資産を「減らす」機能 狙いの一つはシニア層訴求
「年金制度が改定されて、15年の幅で受け取れるようになる。75歳からなら1.8倍もらえる。ならば75歳までの間、どうお金を受け取るのかが大事になっていく。働き方、もらい方、使い方。この3つをどう組み合わせるかが大事になる」
定期売却サービス開始の背景を、楽天証券アセットビジネス事業部長の長谷川卓弥氏はこう話す。貯めることが資産形成の目的ではなく、貯めたお金は、目標やゴールを実現するための手段だ。そのためには、資産を取り崩して現金にしていく必要があるが、「いくらずつ取り崩したらいいの、どのくらい取り崩すのは難しい」(長谷川氏)。
これをシステム化し、自動的に取り崩せるようにしたのが定期売却サービスというわけだ。
もちろん、顧客から資産を預かって運用の手伝いをするのが証券会社のビジネスだ。定期売却機能などを提供しては、預り資産残高が減るじゃないか、という懸念もある。長谷川氏は、「事業性の議論がなかったわけじゃないが、こうしたサービスをきっかけにユーザーが動き出してくれれば、周りまわってメリットがある」と話す。
狙いの一つは、老後に入り資産の取り崩しニーズを持つシニア層の取り込みだ。楽天のポイント経済圏との相乗効果で、現在楽天証券のユーザーは急速に増えている。しかしその多くが、ネットリテラシーの高い若年層だ。
「楽天証券のお客様は、圧倒的に若い方がどんどん増えている。銀行や対面証券は20〜30代の顧客に訴求できていないと思うが、われわれは逆だ。期待しているのは、当社と取引が現在ない人たち。日本の金融構造はかなりの金額が預貯金に固定化されている。このサービスをきっかけに、お金が(株式などの)直接金融にシフトすれば日本が元気になる。そのお金を使うようになれば、消費にも貢献する」
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