20年度「賃上げする」企業は5割超 最も賃金改善が進みそうな業界は……:「労働力の確保」が大きな課題
帝国データバンクによると、2020年度に賃金改善を実施する見込みの企業は53%。人材の確保や定着を目的に賃上げを実施する企業が多かった。
帝国データバンクが2月17日に発表した「2020年度の賃金動向に関する企業の意識調査」によると、ベースアップや賞与の引き上げといった賃金改善を実施する見込みの企業は5割を超えた。一方、賃上げの見込みがない企業は3年ぶりに2割に達した。人材の確保や定着のために賃上げを実施する傾向が強い。
20年度の賃金動向については、正社員の賃金改善が「ある」と見込む企業が53.3%。4年連続で5割を上回ったが、前回調査(19年度見込み)と比べると2.2ポイント減少した。「ない」という回答は20.2%となり、3年ぶりに2割を超えた。
賃金改善が「ある」と答えた企業が最も多い業界は「建設」で、57.9%が賃上げを見込む。「運輸・倉庫」(55.2%)、「サービス」(54.3%)、「製造」(54.2%)、「小売」(53.5%)も比較的多かった。「金融」は36.1%と全体の中では少ないが、06年の調査開始以降で初めて「ある」が「ない」を上回った。
賃金改善の具体的な内容は「ベースアップ」が45.2%、「賞与(一時金)」が26.3%。ベースアップは4年連続で4割を超えたが、賞与は3年ぶりに3割を下回った。
賃金改善が「ある」と回答した企業にその理由を聞くと(複数回答)、「労働力の定着・確保」が80.6%となり、過去最高を更新した。6年連続で前年を上回っており、人材不足が課題となっている企業が多い傾向が強まっている。企業からは「働き方改革によって残業が減るため、基本給を上げて対応する」などの声があったという。
他の理由としては、「自社の業績拡大」(36.0%)、「同業他社の賃金動向」(23.8%)もあった。
一方、賃金改善が「ない」理由(複数回答)は、「自社の業績低迷」が58.1%で最も多く、5年ぶりに増加した。
賃金改善を見込む企業からは「労働力なくして競争には勝てないので、企業の成長や生き残りを目指して社員を優遇したい」「賃金上昇を販売価格に転嫁できないので、省力化投資などによる生産性向上で人件費アップ分を吸収するよう努力する」といったコメントがあった。一方、賃金改善を予定しない企業からは「労働者確保や環境改善にお金を回したいが、取引先からの値下げ要求への対応に苦慮している」「販売単価に反映できないのでどのように賃上げを行うかが課題」などの声があった。
調査は1月20〜31日に全国2万3665社を対象に実施。有効回答企業数は1万405社だった。賃金に関する調査は毎年1月に実施しており、今回で15回目。
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