“お上”の指示でやっと広がる時差通勤と、過重労働を招くフレックスタイム――ニッポン社会の限界:河合薫の「社会を蝕む“ジジイの壁”」(1/4 ページ)
新型コロナウイルス感染拡大の不安が高まる中、テレワークや時差通勤を促進する行政機関や企業が増えてきた。通勤ラッシュのストレスを軽減する動きは広がってほしいが、日本人には「フレックスタイム」よりも「時差通勤」が必要ではないか。なぜなら……
新型コロナウイルスへの不安感が高まる中、やっと“働かせ方”にも変化が見えてきました。
まったくと言っていいほど広がらなかった「テレワーク」や、通勤ラッシュを避ける「時差通勤」を取り入れる行政機関や企業が増え、なかには完全なテレワークを始めた企業もあると報じられています。
……ったく。テレワークも時差通勤も今すぐにでもできる、それでいて働く人の生産性向上に直結する「働き方改革」なのに。政府から言われないとマッチョタイム(=男社会の時間にとらわれた働き方)から抜け出すこともできないのか!と、文句の一つや二つ言いたくなりますが、どちらも「やってみればいいところが分かる」はずなので、これを機に働き方改革の一環として是非とも広がってほしいものです。
そもそも首都圏の通勤ラッシュは異常です。
私は会社勤めではないので、めったにラッシュ時に乗ることはないのですが、たまに乗ると自分の足の行方すら分からなくなり、「私、ひょっとして宙に浮いてる?」って感じですし、前のお姉さんの髪の毛が鼻に入りそうになったり、どこからともなく漂ってくるお酒臭い吐息や、キツい香水の匂いで気を失いそうになったり……。「ストレス」という言葉は会社員のためにあるのではないか、などと、なぜか皆さまに申し訳なくなるほどの密集ぶりです。
国土交通省では“痛勤時”の乗車率は200%未満としていますが、こちらの図(国交省Webサイトより)で見る限り、250%を超えていることは間違いありません。
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