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“お上”の指示でやっと広がる時差通勤と、過重労働を招くフレックスタイム――ニッポン社会の限界:河合薫の「社会を蝕む“ジジイの壁”」(2/4 ページ)
新型コロナウイルス感染拡大の不安が高まる中、テレワークや時差通勤を促進する行政機関や企業が増えてきた。通勤ラッシュのストレスを軽減する動きは広がってほしいが、日本人には「フレックスタイム」よりも「時差通勤」が必要ではないか。なぜなら……
通勤ストレスが仕事やプライベートに影響
民間の研究所が2万人を対象に行った調査によると、通勤時間の平均は49分。40分以上60分未満が27.4%、60分以上90分未満が27.2%で、3割近い人が1時間以上も超満員電車に耐えているのです(ザイマックス不動産総合研究所より抜粋し、要約)。
さらに、
- 通勤時間が長い人ほど、通勤ストレスが高い
- 通勤ストレスが低いグループほど仕事満足度が高い
- 通勤ストレスが低いグループほどプライベート満足度が高い
- 通勤ストレスが低いグループほど、会社へのエンゲージメントが高い
- 「毎日楽しく働けている」と回答した割合は、通勤ストレスが高いグループ(35.3%)に比べ、通勤ストレスが低いグループ(68.1%)の方が30ポイント以上高い
など、通勤時のストレスが仕事にも影響を及ぼすことが分かりました。
不思議なのは、こんなにも日本の通勤はストレスを与えるのに、実は通勤時間に関する調査研究は日本ではほとんど行われていないのです。最近になってやっと「通勤時の混雑具合とストレスの関係性」を客観的データに基づいて調査する研究が出てきましたが、対象者が少ないので「これだ!」というエビデンスは得られていないのが現状です。
一方、欧州では1990年代後半から調査研究が蓄積され、さまざまな知見が得られてきました。
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