美辞麗句で求職者は騙せない! アピールのはずが「ブラック企業かも」と思われてしまう求人広告の特徴:新連載・あなたの会社は大丈夫? 求職者に「ブラック企業」と思われないために(3/4 ページ)
新卒採用のシーズンが始まった。企業は求職者に対して自社を良く見せようとしがち。しかし、「良かれ」と思ってやっていることで「ブラック企業」と判断されるリスクも。今回は、「求人広告」について、ブラック企業に詳しい新田龍氏が解説する。
給与が異常に高い →何かしら「ブラックな内幕」の存在を想像する
2019年の新卒大卒者の初任給平均額は21万200円、高卒初任給平均額は16万7400円(厚生労働省「令和元年賃金構造基本統計調査」より)である。目安として、その金額から3割を超えて高い設定をしている会社は「故意に額面を高く見せている」と受け取られる可能性がある。
まず考えられるカラクリは「みなし残業代」だ。これは賃金の中にあらかじめ一定時間分の残業代を含ませておく制度であり、一定の残業代を固定して支払うことから「固定残業代」とも呼ばれる。例えば「初任給25万円!」といえば一見「高給」と捉えられるだろうが、その内訳が「基本給20万円+固定残業代5万円」だとすると、基本給部分はむしろ平均より低く、労働時間で割るとかなり割安になってしまう。
もう1つのケースが「ノルマ達成時の報奨金が支給された場合のモデル賃金」である場合だ。この場合はあくまでも「理論値」であり、全員に保障されるわけではない旨を明示しなければならない。額面を高く設定している場合は、まずそれが基本給なのか総額なのか、そしてなぜ高い設定なのか、説明しておくことが望ましい。
社員数に対して、求人数が多い →退職者が多く、入社後のマネジメントも手薄である雰囲気を察知する
まずは現時点での社員数と、採用予定人数を比べてみていただきたい。目安としては、全社員数のこれまた3割を超える程度なら「多い」部類に入る。このままでは、入社後何らかの理由で辞める人が多く、それを見積もった上で採用している、と勘繰られることになるだろう。
また、バランスが悪いほどの大量採用をしてしまうと、入社後にしわ寄せが来る可能性が高い。すなわち、「入社してきた社員を十分管理し、教育できる人が相対的に少ない」状況になってしまうわけだ。そうなると、社員1人当たりの仕事のフォローやマネジメントが薄くなってしまうことにつながり、個々人の成長のチャンスを逃してしまうばかりか、きちんと評価できる人が少ないことで、評価、昇進、昇給の機会まで逃がしてしまうかもしれない。そういった状況が放置されていることは、求職者からすると当然、マイナス要素だ。
仕事内容が「抽象的」で「よく分からない横文字」 →人気がない/後ろめたい仕事であることを隠していると思われる可能性がある
仕事選び・会社選びの段階では、その会社や仕事が持っている「イメージ」が先行するものだ。致し方ないことだが、かといって実態を明示しないのは「詐欺」同然であり、結果的にあなたの会社のブランドイメージを著しく毀損(きそん)することになるだろう。
以下は、実際に求人情報誌に掲載されていたことのあった「職種」もしくは「業務内容」である。実際なにをする仕事なのか、イメージがつくだろうか。
(1)オフィスのIT化に関するコンサルティング
(2)ハウスメンテナンスアドバイザー
(3)広告代理店のセールスマーケティング
(4)コーポレートプロフェッショナルアドバイザー
(5)アミューズメントスタッフ(幹部候補生)
解答は……
(1)オフィス向けコピー機、電話機の新規開拓営業
(2)害虫駆除の営業
(3)フリーペーパー広告の新規飛び込み営業
(4)損害保険の営業
(5)パチンコ店員
ご覧の通り、一見してクリエイティブな印象の横文字を使うことで、何となくイメージがよくなり、仕事の実態が見えにくくなってしまうことがあるのだ。あなたの会社の求人情報において、はっきりと「○○を売る仕事です」と記載されていない場合は注意が必要だ。募集に苦労し、離職率が高い会社や職種ほど、「コンサルティング」「マーケティング」といったフレーズを多用することが多い。このような抽象的なキーワードは、情報感度が高い、本来ターゲットとすべき優秀な人材から「怪しい」と感じられてしまうことになる。「商材は何か?」「具体的に何をするのか?」といった点について懇切丁寧に情報開示することが望ましい。
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