韓国で広がる「感染者追跡アプリ」の賛否 テクノロジーを感染防止にどう使うのか:世界を読み解くニュース・サロン(4/4 ページ)
新型コロナウイルスが世界で猛威を振るう中、感染者が多い中国や韓国では、感染者情報を提供したり、健康状態を登録したりするアプリが使われている。情報管理やプライバシーの問題はあるが、感染症対策にテクノロジーを取り入れることは有効かもしれない。
日本でもテクノロジーを活用できないか
ただ中国のアプリの怖いところは、こうしたデータが全て政府や警察などと共有されてしまうことだ。登録して情報を入れると、随時それが警察当局に送られることになり、健康状態も管理される、と米メディアなどは報じている。
そんな徹底した管理体制を敷いている中国では、それでもまだ感染者数が増え続けている。逆に言えば、スマホの時代でなかったら、感染者数はさらに多かったに違いない。そうすれば、世界的にもっと多くの人たちが新型コロナに感染していたかもしれない。
スマホの時代になった今、感染症が世界に拡散されるのを食い止めるために、日本もアプリのような新しいテクノロジーをもっと駆使できないものだろうか。例えば、多くの人が集まっている地域を時間ごとに地図で示してくれるようなアプリが参考になるかもしれない。電車の混み具合をピンポイントで車両ごとに教えてくれるアプリももっと広がれば便利だろう。またマスクや消毒液、トイレットペーパーなどの在庫状況が細かく分かるアプリもあれば、買い占めパニックは軽減されたかもしれない。
スマホの時代だからこそ、社会に貢献するようなアイデアが求められている。
筆者プロフィール:
山田敏弘
元MITフェロー、ジャーナリスト、ノンフィクション作家。講談社、ロイター通信社、ニューズウィーク日本版に勤務後、米マサチューセッツ工科大学(MIT)でフルブライト・フェローを経てフリーに。
国際情勢や社会問題、サイバー安全保障を中心に国内外で取材・執筆を行い、訳書に『黒いワールドカップ』(講談社)など、著書に『ゼロデイ 米中露サイバー戦争が世界を破壊する』(文藝春秋)、『モンスター 暗躍する次のアルカイダ』(中央公論新社)、『ハリウッド検視ファイル トーマス野口の遺言』(新潮社)、『CIAスパイ養成官 キヨ・ヤマダの対日工作』(新潮社)、『サイバー戦争の今』(KKベストセラーズ)がある。テレビ・ラジオにも出演し、講演や大学での講義なども行っている。
お知らせ
新刊『世界のスパイから喰いモノにされる日本 MI6、CIAの厳秘インテリジェンス』(講談社+α新書)が1月21日に発売されました!
イラン事変、ゴーン騒動、ヤバすぎる世界情勢の中、米英中露韓が仕掛ける東アジア諜報戦線の実態を徹底取材。
『007』で知られるMI6の元スパイをはじめ世界のインテリジェンス関係者への取材で解き明かす、東京五輪から日本の日常生活まで脅かすさまざまなリスク。このままでは日本は取り残されてしまう――。
デジタル化やネットワーク化がさらに進んでいき、ますます国境の概念が希薄になる世界では、国家意識が高まり、独自のインテリジェンスが今以上に必要になるだろう。本書では、そんな未来に向けて日本が進むべき道について考察する。
関連記事
- 中国の超大国化がリスクに 新型コロナウイルスで表面化した「アジア人差別」と日本
中国発の新型コロナウイルスが世界で混乱を引き起こしているが、人種差別まで“伝染”している。欧米における「中国人への差別」は、同じアジア人である日本人にも降りかかる。この問題は世界の反中意識が高まれば、さらに深刻になる可能性がある。 - 新型コロナでデマ拡散「インフォデミック」に踊らされない“リテラシー”とは
新型コロナウイルスが世界的に広がっている中で、「中国による生物兵器だ」といったフェイクニュースも拡散している。このような「インフォデミック」を警戒し、真偽不明の情報に惑わされないようにするために、リテラシーを持って行動することが必要だ。 - 僕らのヒーローだったジャッキー・チェンが、世界で嫌われまくっている理由
香港アクション映画の象徴的存在、ジャッキー・チェンのイメージダウンが止まらない。隠し子である「娘」の振る舞いや、自伝で語られた「ダメ人間」ぶりなどが欧米やアジアで話題になっている。私たちのヒーローだったジャッキーに何が起きているのか。 - 日韓関係悪化でも… サムスンが日本企業と組んで開発する「絶対安全なスマホ」
日韓関係が悪化する中、サムスン電子のグループ企業が日本のセキュリティ企業と組んで「セキュリティ特化型スマホ」を開発している。便利になるにつれて、サイバー攻撃の危険性が増しているスマホ。安全性を高める技術とはどのようなものなのか。 - 中国が着手した「6G」って何? 5Gから10年先の“覇権”を巡る思惑
米国や韓国、中国が「5G」の通信サービスを開始。一歩遅れた日本も2020年にスタートする。そんな中、中国が早くも「6G」の研究を始めたと発表。現実的な話なのか。今、“6Gの世界”を想像することは難しいが、日本もうかうかしていられないかもしれない。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.