コロナ問題で気になる「鉄道の換気」の秘密 今こそ観光列車に乗りたいワケ:杉山淳一の「週刊鉄道経済」(2/6 ページ)
鉄道事業者の新型コロナウイルス対策は「通勤電車での感染予防」と「減便」の2つ。通勤電車の換気のための「窓開け」にも歴史がある。一方、通勤電車とは違って、特急列車を運休するのは乗客の減少に対応するためで、集団感染の危険が高いからではない。
通勤電車は絶賛換気中、利用客はマスクで自衛
厚生労働省が3月9日に公開した「集団感染の発生条件」は、「換気の悪い密閉空間」「多くの人々が密集」「手を伸ばして届くほどの距離で会話、発声」である。国土交通省が大好きな「混雑率の目安」というイラストを見ると、混雑率100%でも「多くの人々が密集」状態だ。混雑率は一定時間の輸送人員をその時間の車両定員の和で割っただけで、実態としては、通勤電車の個別の車両の混雑率は100%から250%まで混在する。
もし、集団感染を危惧して列車を運休するならば、特急列車ではなく満員の通勤電車を運休すべきである。もちろんそんなことはできない。在宅勤務が増えたとしても、それはデスクワークする人など限定的で、多くの人々は通勤する必要がある。商店に店員は必要だ。工員は設備を自宅に持ち帰るわけには行かない。
通勤する人々は、時差通勤したり、マスクを着用したりと自衛して列車に乗る。鉄道会社としてできることといえば、減便よりも増便して1列車あたりの人の密度を下げたほうがいい。しかし、すでに限界まで列車を運行しており、これ以上は無理だ。「多くの人々が密集」は避けられない。
電車内は「換気の悪い密閉空間」と思われがちだ。ここは、鉄道事業者が努力している。それが「窓開け」だ。もともと通勤電車は換気性が高い。片側に3つも4つも大きな扉があり、駅で開くたびに人が動くから空気がごっそりと移動する。だから換気が不安な人は各駅停車を選ぶといい。そんな人が増えれば、急行や快速などに偏った混雑も解消される。
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