なぜ「日本の上司」は、“下に理不尽な要求をするおじさん”が多くなってしまうのか:スピン経済の歩き方(3/6 ページ)
「上司が理不尽な要求ばかりしてきて、悩んでいる」といったビジネスパーソンも多いのでは。それにしても、なぜ日本の上司は“信じられない要求”をしてくるのか。筆者の窪田氏はこのように分析していて……。
職場で何を求めているのか
この調査によれば、日本の労働者は「勤務先への満足度」が対象国中で最下位、「管理職になりたい」という回答も最下位だった。では、より良い職場を目指しているのかというとそんなこともなく、「転職したい」という回答も最下位となっている。ならば、日本人の労働者はさして好きでもない職場にしがみついて、なんのための働いているのか。
まず回答の多かったのは「収入」だ。これは普遍的なところで他国でも同じだった。が、その次に並ぶのが日本の働き方の異常さを物語っている。「職場の人間関係が良いこと」と「休みやすいこと」というよその国の労働者が気にもかけていないことを日本人だけが重視しているのだ。
「職場の人間関係が良いこと」は台湾やタイなどでは7位、中国やインドは10位。「休みやすい」に至っては、13の国と地域では「圏外」である。代わりに上位になっているのは「自分のやりたい仕事であること」(台湾)、「自分の能力や個性が生かせること」(中国)、「仕事とプライベートのバランスがとれること」(ベトナムなど)という「やり甲斐」なのだ。
つまり、我々日本人にとって働くということは、出世やキャリアアップでもやり甲斐でもなく、「カネ」と「人間関係」と「有給休暇」なのだ。
なぜこうなるのかというのは、総合人事・人財サービスを展開するアデコが行った調査を見れば明らかだ。
平成元年(1989年)に新卒社会人になった1000人と、平成30年(2018年)に新卒社会人になった1000人に対して、「安定した大手の企業とこれから成長しそうな新しい企業、どちらで働きたいと考えていたか」と質問をしたところどちらも7割近くが「安定した大手」と回答した。
もうお分かりだろう。今も学生の就職人気ナンバーワンが「公務員」であることからも分かるように、大多数の日本人にとって働くということは、「安定した組織にしがみつく」こととほぼ同義なのだ。
さて、そんな“社畜社会”ともいうべき日本社会のなかで、管理職になったらどのような行動に走るか考えていただきたい。「カネ」「人間関係」「有給休暇」という安定したポジションを定年までキープすることが目的となっている組織人の行動原則が、「組織に逆らわない」ことがポイントになることは言うまでもないだろう。もしそこで理不尽な命令が“上”から流れてきたら、面倒に巻き込まれぬようさっさと自分よりも弱い立場の者へ押し付けてしまうのは、極めて自然なリアクションではないか。
これが「日本の上司」が“下”に理不尽な要求してしまうメカニズムである。
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