過疎化、高齢化……地方金融の課題をどう解決するか Fintech協会理事の神田潤一氏インタビュー:フィンテックの今(2/4 ページ)
人口減少や少子高齢化など多くの課題を抱える日本の地方社会。金融に目を向けて見ても、地域を支えてきた地方銀行の経営は厳しさを増している。こうした地方の課題をフィンテックはどう解決していくことができるのか。
――金融へのアクセスを確保するという面でもフィンテックは重要になりそうですね。
神田 新興国と違って、ほとんどの人が複数の銀行口座やクレジットカードを使っている日本においては、金融包摂(※)が課題として挙がることはあまりないですが、地方に目を向けると様子は異なります。
(※)金融包摂(Financial Inclusion)」:経済的・地域的に既存の金融サービスを受けられない人々が排除されることなく、融資などの金融サービスに平等にアクセスできる状態を意味する。
遠く離れたところにしか金融機関がない、キャッシュレス決済を使いたくても加盟店がまばらなど、地方では都市部の人が普通に使っている金融サービスを受けられないケースもあります。個人だけでなく地方の中小企業にとっても、金融機関の店舗が遠いことや手続きが煩雑などの理由で機動的に融資を受けにくいという問題もあるのではないでしょうか。
そこでもやはり、フィンテックサービスが解決の一手となります。中小企業への融資についても、会計や銀行の入出金のデータをもとにオンラインで素早く審査・融資し、運転資金を提供するオンラインレンディングやトランザクションレンディングと呼ばれる取り組みが広がっています。
また、日本にいる外国人にとっても金融包摂は課題となります。地方でも国際送金やクレジットカード、デビットカードなど、海外に負けないようなキャッシュレス決済のサービスを提供していくことが求められます。メガバンクやグローバルな金融機関が多い都市部に比べて、地方ではそういったサービスを提供できる金融機関が少なく、より強く不便を感じているのではないでしょうか。
この問題についても今後はフィンテック企業が取り組みを強めていくことが期待されます。フィンテックを使えば導入や運用のコストが抑えられ、新サービス提供のハードルを下げることも期待できます。外国人の労働力を活用して地方の労働力不足を解消していくためにも、金融サービスの面で外国人が働きやすい環境を整備していく必要があるでしょう」
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