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新型コロナで増える「パワハラ」 “悲劇の温床”を放置する経営トップの責任河合薫の「社会を蝕む“ジジイの壁”」(3/5 ページ)

新型コロナ問題でパワハラが増えるのではないかという懸念が広がっている。人は環境によって被害者にも加害者にもなり得る。経営が厳しくなることは避けられないが、「人」を軽視すると、弱い立場の人の命が奪われることになるのを忘れてはいけない。

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パワハラの責任は企業経営にある

 そういった流れからも前述のテレコム事件への注目度は高く、メディアは連日“モラハラ”を取り上げました。モラハラとは、日本のパワハラと同義です。

 ただし、日本ではパワハラは「加害者と被害者」という二者間の問題として取り上げられますが、フランスでは「組織の問題」として扱われ、組織を運営する経営者が厳しく罰せられるのです。

 そもそもフランスで「モラハラ」という言葉が一般化したのは、1990年代後半にさかのぼります。

 精神科医のマリー・F・イルゴイエンヌの著書、『Le Harcelement Moral: La violence perverse au quotidien(邦題:モラルハラスメント・人を傷つけずにはいられない)』が大ベストセラーになったことがきっかけです。

 それまで多くの人たちが「職場のいじめや暴力」を経験したり目撃したりしていましたが、その“問題”を“問題にする”ための言葉がありませんでした。そこへ、イリゴイエンヌ氏がもともと夫婦間の精神的暴力を示す言葉だった「モラハラ」を、職場で日常的に行われているイジメに引用したことで火がついた。「私もモラハラされた!」「うちの職場でもモラハラがある!」と大論争になり、それまで「隠されていた問題」が表面化したのです。

 さらに、イリゴイエンヌ氏が著書の中で、いくつもの実際におきた事例を被害者目線でとりあげ、「企業経営がモラハラを助長している」との見解を示したことで、批判は「個人」ではなく「組織」に向けられることになります。

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