日本法人も始動 デジタル証券発行の先駆者、セキュリタイズとは何か(3/3 ページ)
有価証券をブロックチェーンに乗せる、いわゆる証券トークン化の先駆者が米Securitizeだ。4月1日には日本法人も始動。進行中のものも含めて、既に70件ものSTOを扱っている。特徴と、国内におけるSTOの可能性を聞いた。
STOの可能性と課題
Securitizeがこれまで取り扱ったSTOでは、不動産のデジタル証券化のほか、投資ファンド、ブロックチェーン企業の資金調達などがある。変わったものでは、米プロバスケットボールNBAの選手が、自身の契約金をベースにしたデジタル証券を発行した例もある。3年間の債券で、毎月金利が支払われ、満期を迎えれば元本が支払われる。ファンがプレイヤーに投資できるデジタル証券という位置付けだ。
従来の事例では、金額は大きくても15〜20億円くらいで、債券のパターンが多いが、ABS(アセットバックセキュリティ、資産担保証券)の例もある。「調整しなくてはいけない関係者が比較的少ないので、不動産の証券化は向いている。STOは資金調達のハードルを下げるためのサービスなので、金額の大小よりも案件の内容が重要だ」(森田氏)
パブリックブロックチェーンを使ったSTOが有名なSecuritizeだが、ブロックチェーン自体は選べるプラットフォームになっている。パブリックではイーサリアム上のERC20準拠のDSトークンを使い、プライベートブロックチェーンではプライベートイーサリアムやオープンソースのHyperledgerも利用できる。同社のロードマップによると、早期に立ち上がるのはプライベートブロックチェーンを使った、機関投資家を中心としたマーケットだ。その後、オルタナティブ投資の一つとしてクリプト投資家や富裕層を中心に、パブリックブロックチェーンでのSTOが増加すると見ている。
将来に向けては、さまざまな用途での資金調達の可能性があるが、国内においては当初、規制の観点から証券会社とパートナーを組んでSTOを実施していく方向だ。STOには金融商品取引業のライセンスが必要となるためだ。この点で、従来のICOがしっかり整備されたというよりも、既存の証券発行が、技術によって効率化されるという意味合いが強い。
「既存のプレーヤーと、まずは業務の効率化から始まるが、安全性などが認知されれば広がっていく。時間はかかるかもしれないが、新しい市場が作れるのではないか」(森田氏)
関連記事
- 4月に始まるSTOは何を変えるのか Fintech協会代表理事の鬼頭武嗣氏インタビュー
2020年4月から金融商品取引法(金商法)に基づき始まる、ブロックチェーン(分散型台帳)を使った資金調達「STO(セキュリティー・トークン・オファリング)」が注目を集めている。今後、STOは日本で普及するのか、また、STOによって資本市場はどう変化するのか。 - 2020年に変わる3つのフィンテック関連法改正 Fintech協会理事の落合孝文氏インタビュー
2020年はフィンテック関連でどのような法改正が進むのか。送金サービスを提供する資金移動業が3種類になり、1つの登録で証券、保険の商品などを販売できる「金融サービス仲介業」が登場。そして、給与を銀行振り込み以外で支払える、ペイロールカード解禁が想定される。 - STOと併せて注目のステーブルコイン Fintech協会 落合氏、神田氏インタビュー
既存通貨に連動(ペッグ)などして、価格安定を目指すステーブルコインに注目が集まっている。どんな特徴を持ち、金融サービスにどんな影響を与えるのか。 - ブロックチェーン技術を使った資金調達STOの業界団体、SBI証券ら証券6社が立ち上げ
ブロックチェーンなどに記録された有価証券(セキュリティ・トークン)を発行することで資金を調達するSTOの環境が整いつつある。SBIとカブコム、大和、野村、マネックス、楽天の証券6社は、自主規制の作成などを行う日本STO協会を設立した。 - コインチェックがIEOの検討開始 ICOによる資金調達を支援
コインチェックがユーティリティ・トークンの発行による資金調達を支援する事業の検討開始。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.