SaaSはバックオフィスの何を変えるのか:本当に効率を上げるためのSaaS(3/3 ページ)
バックオフィス業務を支える便利な道具に、SaaS(サース)がある。営業やマーケティングの分野が先行して導入が進んだが、ここにきてバックオフィスにもSaaSの活用は広がっている。SaaSを導入して効率化された企業もあれば、逆にうまく活用できずに生産性が下がってしまったという企業もある。その違いはどこにあるのか。
求められるスキルが変わる
ある営業ツールが、従来の営業を「オールド営業」と揶揄(やゆ)したCMを流しているが、SaaSを活用した効率的なバックオフィスが増えてくれば、作業を黙々とこなすだけの従来のバックオフィスは「オールドバックオフィス」と呼ばれるようになるかもしれない。SaaSによる効率化や自動化で、バックオフィスの担当者が「作業」する必要性が薄れていくようになることは間違いない。
そうなると、バックオフィス人材に求められるスキルも大きく変わる。これまでは、黙々と正確に作業ができる人が向いていると考えられてきた。これからは、経理や労務などに関する知識や専門性に加えて、SaaSを活用して効率的な業務フローを構築するITリテラシーや業務構築能力が必要不可欠になってくる。
決まったルールに従って正確に処理することに関しては、人間よりもシステムの方が得意だ。バックオフィスの担当者は、全体の処理手順を整えたり、処理されたデータを活用して経営戦略を支援したりといった業務に注力できるようになる。
システムに仕事が奪われるのではなく、システムによって仕事の仕方が変わる、というのが正しい理解だろう。日本の労働人口がこれから減少していくことが避けられない以上、バックオフィスも従来と同じやり方をしていたのでは当然に破綻する。SaaSによって中小企業でも効率的なバックオフィスが構築できるようになり、オールドバックオフィスで業務を行っている企業との生産性は数倍から数十倍も開いてしまう。
SaaSで本当に効率を上げるには?
中小企業にとっては、月額数千円から数万円の費用で導入できるSaaSは、非常に心強い存在だ。これらのソフトは地味に見えて会社を支える重要な土台となる。ここを理解することはビジネスを理解することにつながる。
SaaSを導入して効率化された企業もあれば、逆にうまく活用できずに生産性が下がってしまったという企業もある。その違いはどこにあるのか、どうすればうまくのか。次回からはSaaSによる効率化に成功した企業、失敗した企業のケースを具体的に解説していく。
関連記事
- マネーフォワードがSaaSビジネスのKPIを開示 19年11月決算
SaaSビジネスでは、顧客ごとに業績を分析するユニットエコノミスクを利用する。いったんユーザーを獲得すれば継続的に売り上げが生まれるSaaSモデルの特性から、企業全体の売り上げやコストというよりも、顧客あたりの、獲得費用、売上高(ARPA)、解約率(チャーンレート)によって事業を評価する仕組みだ。 - SaaSビジネスに必要なもの――スタートアップを助ける「三種の神器」
- freee“10倍値上げ”問題から考えるサブスクエコノミーの落とし穴
今週上場したfreeeの波紋が後を引いている。freeeが提供する法人向け会計サービス内容の改定が今月上旬に発表され、これが実質“10倍値上げ“になるとSNS利用者の間で解釈されたためだ。 - AIがライバルに!? 城繁幸さんに聞くHR Tech時代の人事サバイブ術
人事コンサルタントで作家の城繁幸さんがHR Techで日本の人事がどう変わるかを語った。AIが判断するため人事から人事権が無くなる一方、アナログな役割が重要になるとみる。 - “脱・紙文化”から始まる自治体の働き方改革
日本政府が国を挙げて推進している「働き方改革」。2018年6月には働き方改革関連法案も国会で可決・成立し、いよいよ改革に向けた動きが本格化し始めた。一方で、働き方改革がなかなか進んでいない職場もある。その背景には、“紙文化”から脱し切れていない従来型の働き方があるという。そんな状況をガラリと変容させ得るソリューションが、ワコムから提供されている。今回そのソリューションが自治体の働き方をどう変革するのかを見ていきたい。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.