SaaSはバックオフィスの何を変えるのか:本当に効率を上げるためのSaaS(2/3 ページ)
バックオフィス業務を支える便利な道具に、SaaS(サース)がある。営業やマーケティングの分野が先行して導入が進んだが、ここにきてバックオフィスにもSaaSの活用は広がっている。SaaSを導入して効率化された企業もあれば、逆にうまく活用できずに生産性が下がってしまったという企業もある。その違いはどこにあるのか。
業務フローが根本的に変わる
メリットが多いように思われるSaaSだが、1つだけデメリットがあるとすれば、「開発側の想定する運用に合わせないといけない」ことだ。自社の運用に合わせて自由にカスタマイズ開発ができたインストール型と違い、SaaSはその業務におけるベストプラクティスを想定して機能が設計されている。ベストプラクティスとは「最も効率的な方法」を意味するビジネス用語だが、SaaS活用においてはこの考え方が非常に重要になる。
SaaSを導入するということは、つまり自社の運用スタイルを変えなければならないということでもある。これまで築き上げてきたやり方を大きく変えることを歓迎する人は少ないだろうが、SaaS導入による効率化を実現したいのであれば、まずは「自社のこれまでのやり方が絶対に正しい」という思い込みを捨てることが第一歩である。SaaS導入を機に自社の運用をベストプラクティスにアップデートできると思えばいいのだ。
これまでの会計ソフトや給与計算ソフトなどは、高度な知識を備えた専門家が使う前提で開発されていた。さらにアナログな処理(紙を見ながら入力する、紙を出力して郵送するなど)を念頭に作られている。このアナログな処理がいたるところに存在するため、わが国の生産性は先進国の中でもダントツで低いままだ。バックオフィス系のSaaSはアナログな処理を排除しつつ、業務フローを最適化することを意図して作られている。
売上の処理を例に、従来のやり方とSaaS型の会計ソフト「freee」を使ったやり方を比較してみよう。
まず、従来のやり方では、請求書が発行され、それらを管理するための売上管理表が作られる。それを会計ソフトに仕訳として登録することで、売上が認識される。そして後日、銀行の明細データを会計ソフトに入力して消し込み処理を行い、入金結果を売上管理表に反映する。ここで、未入金のものがあれば営業担当者等に連携して、取引先に連絡をしてもらう。
一連の処理であるため、経理担当者もそこまで複雑だとは思っていないはずだが、こうやって整理してみると請求書、Excelの管理表、会計ソフトと3つのツールにまたがって、5回もの入力が発生することが分かる。
次にfreeeを使った処理を見てみよう。請求書をfreee上で作成し、発行すると自動で売上管理表が作成され、売上の仕訳も登録される。後日、銀行の明細データを取得し、消し込み処理を行うと、管理表の入金結果も更新される。営業担当者にもfreee上で入金結果を確認してもらう。使用するのはfreeeひとつだけ、入力も請求書を発行する最初の1回のみである。どちらがスマートな処理であるかは比べるまでもない。
従来のやり方が間違っているわけではないが、3つのツールにわたって、都度入力が必要になるため、当然ミスも起こりやすく、処理が完了するまでの時間もかかる。会計ソフトは経理担当者しか使えないため、Excelなどで管理表を作って共有する必要も出てくる。二度手間三度手間が生じてしまうのである。
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