未来の金融、グランドデザインが必要 Fintech協会理事インタビュー:フィンテックの今(3/4 ページ)
本格的にフィンテックが普及し、活用されるためには法律や制度の整備が欠かせない。各国が独自に対応を進める中、日本はフィンテックをどう活用していくべきなのか。金融をどう変えていくかというグランドデザインを明確に打ち出すことが必要だ。
――具体的にはどのような方向性が考えられるのでしょうか。
落合 フィンテックの普及で日本経済をどう活性化させるのか、どう消費者の利便を高めるのかを示していく必要があるでしょう。
この際に、日本の地方では既に生活のインフラを維持することが難しくなってきており、課題が噴出していることも重要な手がかりになります(3月25日の記事参照)。海外だとフィンテックは人の仕事を奪うのではないかといわれていますが、日本、その中でも人口減少の痛みが大きい地方では、特にデジタルサービスで代替ができないと社会が維持できなくなります。このような点を踏まえて、地域で、人や物理的な拠点がなくても、継続的に供給できるサービスとしてのフィンテックサービスは今後必要性が高まると思います。
高齢者にとっては、運転免許返納の議論も出てきており、移動手段の確保にも課題があり、金融機関に行くことも次第に課題感が強くなるのではないかと思われます。このようなニーズを満たすデジタルサービスを、フィンテック企業や、金融機関が提供していくことも大事だと思います。
また、電子サービスに慣れ親しんだ若者にとって使いやすいやり方にしていく必要もあります。海外でもミレニアル世代を対象にどうサービスを作っていくかが考えられています。金融以外の業界を見れば、若者の活動が変わって、例えばテレビを見ない若者が増えており、「Tver」のようなネット配信サービスを放送局が協調して実施するなどしております。若者の生活様式の変化は、さらに変わっていくと思われますから、金融業界でも若年層向けのサービス構築も進めていかなければならないと思います。
なお、高齢者の財産管理をどう管理するかといった問題もあります。電子化して口座の情報を家族や見守りに関する業務を行う人など、複数の主体が見られるようにしていくといったことも一つの対策として考えられるでしょう。このような場面では医療と金融が交錯してきます。今の時代にはクロスインダストリーでのビジネスの可能性も広まってきていますので、金融が他の業界の基盤としての働きをいかに果たしていけるようにするか、ということも今後求められる役割だと思います。
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