未来の金融、グランドデザインが必要 Fintech協会理事インタビュー:フィンテックの今(4/4 ページ)
本格的にフィンテックが普及し、活用されるためには法律や制度の整備が欠かせない。各国が独自に対応を進める中、日本はフィンテックをどう活用していくべきなのか。金融をどう変えていくかというグランドデザインを明確に打ち出すことが必要だ。
――鬼頭さんは各国のFintech団体と積極的な外交活動をされていますが、グローバルで議論されているデータ流通の仕組みについて、今後、日本はどのように作っていくべきだと考えていますか。
鬼頭武嗣氏(以下、鬼頭) 第三次産業革命までのフィンテックといえば、金融商品やマネーのデジタル化が目的でした。一方、第四次産業革命の今は、この関係が逆になります。つまりマネーのデジタル化ではなく、データのマネタイゼーションがテーマです。
データ流通の仕組みを考える上で、これまでの金融システムが参考になります。これまで、我々は有価証券を代表とする価値を持つものを、グローバルで同時に高い流動性の下で流通させるために、多数のステークホルダーが関わりながら市場を制御したりモチベートしたりするための仕組みを作ってきました。これまでは貨幣経済でしたが、それが今後はデータに変わるだけともいえるでしょう。
今後はこれまでのような国の単位ではなく、グローバルにデータ流通のための新しい仕組みをどう描いていくかというのが大きなテーマとなるでしょう。そうした議論の際に日本が置きざりにされないようにしたいと思っています。
欧州、米国、中国、インドなどの地域ごとに分散したエコシステムが作られていくでしょうが、それらをつなぐような上位の仕組みを作っていくことが重要です。こういった相互互換性を持たせるためのメタな制度設計、市場作りに日本も貢献すべきではないでしょうか。
その際にはスマートシティーでの取り組みが一つのヒントになるかもしれません。スマートシティーもフィンテックと同様に、第三次産業革命では都市のデジタル化が志向されていました。それが第四次となると、データが流通する場としての「街」をどう作っていくかがテーマになっています。
ところが、都市ごとに持っているデータや自治の仕組みは異なります。そして、各地に分散したスマートシティーをつなぐ時には、そこの互換性をどう確保するかを考えていかないといけません。フィンテックでも同様に、こうした流れに乗り遅れるわけにはいきません。データの活用に乗り遅れたら、100年単位でグローバルの流れに乗り遅れてしまうでしょう。
識者プロフィール:落合孝文(おちあい たかふみ・Fintech協会理事)
渥美坂井法律事務所・外国法共同事業パートナー弁護士。
慶應義塾大学理工学部数理科学科卒業。同大学院理工学研究科在学中に旧司法試験合格。森・濱田松本法律事務所で約9年東京、北京オフィスで勤務し、国際紛争・倒産、知的財産、海外投資等を扱った。現事務所に参画後は、金融、医療、不動産、 MaaS 、 IT などの業界におけるビジネスへのアドバイス、新たな制度構築などについて活動を行っており、政府、民間団体のさまざまな理事、委員などを多く務めている。
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