freeeを受け入れられないベテランたち 成功事例と失敗事例:本当に効率を上げるためのSaaS(2/4 ページ)
導入後にバックオフィスの担当者による賛否が真っ二つに分かれるのが会計freeeの特徴だ。freee導入によって大幅にバックオフィスが効率化された会社もあれば、逆に全く使いこなせずに現場が混乱し、結局従来の会計ソフトに戻してしまった会社もある。成功と失敗を分けたのは何だったのか?
成功事例:マーケティング会社・A社
A社は中堅のマーケティング会社である。社員数は約200人、名だたる大手企業もクライアントに抱えていて、売り上げも堅調に伸びている。3年ほど使用しているオンプレミス(自社でシステム・設備を保有する)の会計ソフトとERPパッケージ(基幹業務を統合的に管理するソフトウェアパッケージ)に限界を感じていたため、次回のライセンスの更新をせずに、バックオフィスをすべてSaaSで再構築しようとしていた。そこで選択したのが、顧客管理ソフトのSalesforceとfreeeである。
まず現在の運用を洗い出していった。ERPパッケージでは足りないところが多かったため業務のいたるところにExcel作業が発生し、ベテランの担当者しか把握していない業務も複数あった。
請求書の形式もクライアントごとにバラバラだ。経理部門は月末月初は資料を集めるだけで精一杯で、非効率だと分かっていても運用を見直す時間が取れないまま数年が経過してしまったという状態である。
そこで最初に、会計側で必要な部門別会計や前受け金の把握などのアウトプットから逆算して定義していき、営業側で入力するSalesforceの項目や処理を設計していった。これまで各営業担当者の裁量で行っていた個別対応などは要件定義の段階でバッサリと切り落とした。
そこは担当役員の方から毅然(きぜん)とした態度で、「個別の対応は今後は行わない」と社内外にアナウンスをしてもらった。そうして、営業やバックオフィスの運用をガラッと変える形で新システムへの切り替えが行われた。
Salesforceでレポートが集計できるため営業会議の資料作りが不要になったり、案件の進捗状況などを口頭で共有したりする必要がなくなるなど、営業サイドでも大きな効果は出ているが、何よりも変わったのは経理部門の業務のやり方だ。
これまで月末月初は、複数の担当者に契約の状況や請求内容を確認するのに、経理部門は奔走していた。しかし、すべての情報をSalesforceとfreee上で確認することができ、売上や入金処理の入力の手間も減ったため、月次の会計処理が大幅に短縮された。作業に追われることも少なくなり、これまでは手が回っていなかった数字の精査や経営管理上必要な分析資料の作成などに時間を割くことができるようになった。
登録ミスや計上漏れも大幅に減り、導入から半年後には月末月初は繁忙期ではなくなった。売上規模は拡大しているが、業務プロセス全体が効率化したため、バックオフィスの人員は増やすことなく運用することができている。
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