日本の生産性を押し下げる「経費精算」が無くならない根本理由:本当に効率を上げるためのSaaS(6/6 ページ)
多くの会社員にとって、最も身近な事務処理、経費精算。しかし社員、経理担当者の双方にとって経費精算処理の難しさは、領収書などの原本回収が必須になることだ。電子帳簿保存法の改正はあったが、現時点でも導入企業はたったの2000社弱。中小企業にとってはむしろ導入コストや運用コストが増えるだけで、ほとんどメリットがないのが電子帳簿保存法だ。
ゼロベースで効率化を考えることの重要性
日本は労働生産性が低いといわれている。G7諸国の中でも、記録が残る1970年以来ずっと最下位で、米国を100としたときの日本の生産性はわずかに60。これまではこの生産性の低さを長時間労働でカバーしてきたが、働き方改革が叫ばれる昨今はそれも難しくなってきている。
また、日本の労働人口はこれから更に減少していくことは確実であり、効率化に対して真剣に向き合わなければ、多くの会社の事務処理が回らなくなっていくだろう。効率化をすればコストが削減できるのではなく、効率化をしなければ会社を運営できないという局面が近づいている。
経費精算処理は申請する社員の時間を奪い、内容を確認する上司や経理にも大きな負荷をかけるにもかかわらず、売り上げの増加にはまったく寄与しない。
真っ先に効率化のメスを入れるべき分野ではあるが、原本回収や確認・保管の問題、効率化に貢献しない電子帳簿保存法などの存在もあり、これまで紙での申請がPCやスマホで行えるようになる程度の改善しか行われてこなかった。
しかし、その程度の生産性の改善ではまったく意味がないほど、私たちの周りには非効率な業務があふれている。
生産性の大幅な改善のために必要なのは「今やっている仕事をどうやって早くやるか」ではなく、「今やっている仕事をどうすればなくせるか」という発想である。SaaSには自動化や効率化をウリ文句にしたサービスが多いが、システムを導入するだけでできる効率化には限界がある。自らの頭で考え抜き、無駄を徹底的に省き、その上で高いパフォーマンスを出すためにSaaSを活用する必要がある。
バックオフィスもこれまでのように目の前にある仕事をこなすのではなく、生産性を向上させるために、自ら新しい仕組みを構築するスキルが必要不可欠になってきている。
次回はWeb APIを活用したオープンな思想で複数のSaaSを組み合わせ、効率化を実現する取り組みについて見ていく。
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