「コロナ手当」を美談で済ませず見直すべき、非正規雇用の“当たり前”:河合薫の「社会を蝕む“ジジイの壁”」(4/4 ページ)
新型コロナウイルスによって、医療や小売、物流などで働くエッセンシャルワーカーが理不尽な状況に陥っている。流通各社が従業員に一時金を出す動きが報じられているが、そもそも「非正規=低賃金でいいのか」という議論も進めるべきだ。当たり前を疑うことが求められている。
非正規=低賃金は当たり前ではない
そもそも日本では「非正規は正社員より低賃金」が当たり前ですが、欧州諸国では非正規社員の賃金は正社員よりも高くて当たり前。
フランスでは派遣労働者や有期労働者は「企業が必要なときだけ雇用できる」というメリットを企業に与えているとの認識から、非正規雇用には不安定雇用手当があり、正社員より1割程度高い賃金が支払われています。イタリア、デンマーク、オーストラリア、ニュージーランド、カナダなどでも、「解雇によるリスク」を補うために賃金にプラスαを加えるため、非正規労働者の賃金の方が正社員よりも高くなっているのです。
スーパーやドラッグストアなど流通各社で、従業員に手当や一時金を支給する動きが広がっていますが、今回の出来事を機に、「非正規=低賃金で本当にいいのか?」という議論も進めるべきではないでしょうか。
「感染防止に気を配りながら最前線で接客などに当たる従業員の負担に報いるため」
「大変な状況の中でも働いてくれる従業員への感謝とねぎらいの気持ち」
と、ちょっといい話にするのではなく、そもそもの問題を考えてほしい。
100年に一度とされる今回のパンデミックは、私たちの価値観を大きく変えることになると思います。その中で「今までの当たり前はおかしくない?」という疑問を、私たちは今、求められているのかもしれません。
河合薫氏のプロフィール:
東京大学大学院医学系研究科博士課程修了。千葉大学教育学部を卒業後、全日本空輸に入社。気象予報士としてテレビ朝日系「ニュースステーション」などに出演。その後、東京大学大学院医学系研究科に進学し、現在に至る。
研究テーマは「人の働き方は環境がつくる」。フィールドワークとして600人超のビジネスマンをインタビュー。著書に『他人をバカにしたがる男たち』(日経プレミアシリーズ)など。近著は『残念な職場 53の研究が明かすヤバい真実』(PHP新書)、『面倒くさい女たち』(中公新書ラクレ)、『他人の足を引っぱる男たち』(日経プレミアシリーズ)。
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