中小企業が新型コロナ下を生き抜くカギは「借金嫌い」の克服 中には「起死回生」となる業界も?:小売・流通アナリストの視点(5/5 ページ)
新型コロナ対策でさまざまな支援制度が出てきている。その中には「破格の条件」ともいえる融資制度も。平時は「借金嫌い」でも、緊急時には借金をいとわず、とにかく生き抜くことを考えるべきだと小売・流通アナリストの中井彰人氏は指摘する。あらゆる業界が対応を迫られているが、中には「起死回生」のチャンスとなっている業界も?
苦境続きの地銀や信用金庫にとってチャンスとなるか?
膨大な数の中堅中小企業が災害によって、アフターコロナまでの、つなぎ資金を必要とするため、近時ありえないような資金需要が発生している。中小企業は存続に向けた難しい経営のかじ取りを迫られているが、公的支援である制度融資の窓口となる地域金融機関(地銀や信用金庫など)も、その存在意義を問われている状況だ。地域経済の縮小や低金利時代での利幅縮小などの環境変化により、多くの地域金融機関は今後の事業展開が難しくなっている。新型コロナ禍の金融環境はこうした状況を一時的に緩和するかもしれない。
地域金融機関にとっては、リスクのない保証付き制度融資(新型コロナ特別枠は、保証協会100%保証なのでリスクなし)へ積極的に対応することで、融資残高を大きく伸ばすことができ、利幅は大きくはないにせよ、金利収入を増やす可能性は大きい。無金利融資も利子を公的支援で補填するので、金融機関に利息収入は入るからだ。この状況を踏まえれば、制度融資の申し込みが殺到して対応に追われている地域金融機関ではあるが、大きなチャンスが到来したともいえる。
一般的に考えれば、新型コロナ禍による企業倒産が急増し、地域金融機関も不良債権が増えて経営が厳しくなることは避けられない。しかし、こうした非常時こそ、金融機関として公的支援と連携してリスク管理は徹底しつつも、地域企業を支援するか否かで、今後の運命が分かれる。積極的に制度融資に対応し、既存の取引先を支援しつつ、新規先の取り込みを強化できれば、これまでは細る一方であった顧客基盤を一気に拡大できる可能性がある。リスクを負いながら開拓した顧客基盤は、アフターコロナの景気回復期の前向き資金需要をもたらすはずだ。非常時対応の巧拙が、地域金融機関の生き残りにも大きく影響することになりそうだ。
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