中小企業が新型コロナ下を生き抜くカギは「借金嫌い」の克服 中には「起死回生」となる業界も?:小売・流通アナリストの視点(4/5 ページ)
新型コロナ対策でさまざまな支援制度が出てきている。その中には「破格の条件」ともいえる融資制度も。平時は「借金嫌い」でも、緊急時には借金をいとわず、とにかく生き抜くことを考えるべきだと小売・流通アナリストの中井彰人氏は指摘する。あらゆる業界が対応を迫られているが、中には「起死回生」のチャンスとなっている業界も?
緊急時には「借金は悪」という考えを捨てるべき
コロナ禍という、まさに「緊急事態」によって経済全体が制限されてはいるが、震災や戦災のようにインフラが消失してしまったというわけではないため、今後薬やワクチンによってウイルスをコントロール可能になれば、その制約はなくなる可能性が高い。ほぼ元通りの経済活動を行うことができるはずだ。ただ、全ての企業が資金繰りを維持できるわけではなく、制約の期間が長くなればなるほど、淘汰される企業も増えるだろう。だとすれば、その間の資金繰りを維持することができた企業が生き残り、競争相手が減ったマーケットを再分割することが想定される。
資金繰りを維持し、存続してさえいれば、残存者メリットを享受できる可能性は大きいということだ。逆に、高い技術を持った企業だとしても、こうした事態には資金繰りが原因で退場させられてしまう可能性もある。だからこそ、今は借り入れが増えたとしても、公的支援の範囲であれば、可能な限り借りまくり、手元資金を最大に積み増して、こうした冬の時期(必ず次に春が来る)を乗り切る、というのが最も大事なことなのである。
そんなの、当たり前のことじゃないか、と思われるかもしれないが、意外とそうでもない。自粛影響で厳しい経営の業界や、休業要請を受けている業種の方々は、既に資金繰りへの影響が顕著に出ているので、言わずもがななのだが、現金商売ではなかったり、影響が遅れてきたりする業種の方々については、資金繰りへの影響はこれからになる場合も多い。こうした状況でも、当面の資金繰りを考えるというよりは、どうやって仕事を確保して従業員を維持しようか、ということを考えて悩む人も実は結構いるのではないか。だが、世界経済の大半で需要が縮小しているこの時期は、仕事を取ってくる努力より、手元資金を集めることが存続するための条件になる。
ただ、多くの堅実な中小企業経営者にとって、「借金」は悪であり、借金が多くなるということに対する恐怖感は計り知れない。平常時に「可能な限り最大限、借りればいい」などと言うメンタルの経営者にはほとんど会ったことがない。しかし、経営者として至極まっとうな「借金嫌い」の感覚も、こうした非常時には忘れていただく必要がある。もし借りて不要だった分は、プールしておいて新型コロナが過ぎ去った後で、そっくりそのまま返済すればいい。これから新型コロナ禍がいつまで続くのか分からない上、なにが起きるか予想すらできない。何かが起こって、決済資金が1日遅れたというだけで倒産に追い込まれる可能性はあるのだ。
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