SaaSとAPI連携がバックオフィスを変える理由:本当に効率を上げるためのSaaS(5/5 ページ)
日本企業では、1社あたり平均して20種類のSaaSを使っているといわれている。そのデメリットは、データが各SaaSに点在してしまい、管理や運用が煩雑になることだ。それを防ぐためにSaaS間の連携を行うための仕組みがAPIだ。APIによって外部のソフトウェアと簡単に連携できるからこそ、得意領域に特化したSaaSが増えている。
業務全体の設計が重要になる
業務で使用するソフトウェアのことを「ツール」と呼ぶ人も多いが、文字通り業務を行うための道具に過ぎない。機能はもちろん大事だが、どういう意図と目的をもって導入するかを最初に明確にしておくことが重要だ。
理想的なバックオフィスとはどのようなものかを考えてみたことがあるだろうか。各社各様の答えがあるとは思うが、それを言語化する前に「まずはツールを入れよう」という短絡的な意思決定があまりにも多い。
思い描く姿を実現するためにSaaSを導入し、SaaS間の連携をするためにAPIを活用する。いずれも手段の話に過ぎない。手段が目的化してしまえば、どんなSaaSを入れようとも課題は決して解決しない。
APIを活用することで、複数のSaaSを自由に組み合わせてシステムと運用を構築することができる。ただし、API自体は単にソフトウェア同士をつなぐ接着剤の役割を果たしているに過ぎない。業務全体をしっかりと設計せずに闇雲につないでしまうと、かえって運用を複雑にしたり、現場を混乱させたりすることになりかねない。
同一シリーズでそろえるしかなかったころと比べると、ソフトウェア選択の自由度は広がっているが、逆に業務全体を設計する難易度は高くなってしまっている。複数のSaaSをAPI連携してフル活用するためには、パズルのピースのようにカチッとハマる設計をしなければならないのだ。
SalesforceをはじめとするCRMツールの台頭が営業を変えたように、SaaSとAPI連携がバックオフィス全体の業務と働く人間に求められるスキルを大きく変えるだろう。これからのバックオフィスに必要なのは、経理や労務などの特定領域に深い知識と経験を持ちながらも、周辺領域はもちろんシステムにも詳しく、業務全体を設計できる人材である。
次回は筆者が考える「業務設計」を成功させるためのコツを考えたい。
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