「日本人なら国産」のこだわりが、”マスクパニック”を再燃させてしまうワケ:スピン経済の歩き方(2/6 ページ)
「ドラッグストアでマスクを買うことができたよ。『MADE IN CHINA』だけどね」といった人が増えてきたのでは。その一方で、「マスクは国産でなければいけない」という人もいるわけだが、こうした考え方に筆者の窪田氏は警鐘を鳴らしている。なぜかというと……。
”マスクナショナリズム”が台頭するのは、よくない
マスクの「原材料」の国産比率はわずか2割――。このシビアな現実を体現しているのが、シャープの「国産マスク」だ(関連記事)。
三重工場のクリーンルームで生産されているということで、ネト……ではなく愛国心溢れる方たちから称賛されているこのマスクだが、では製品の大半を占める原材料の不織布も国産なのかというと、かなりビミョーな話なのだ。シャープの広報担当に問い合わせたところ、原材料の生産国については「公表していません」の一点張りだったからだ。
断っておくが、「シャープの国産マスクは中国の原材料でつくられているかもしれない」と主張したいわけではない。グローバルサプライチェーンが当たり前になっているこの時代、原材料の調達は品質、コスト、スピードなどを総合的に判断されて決められており、「国産だから」といった理由で選ぶのではなく、品質のいい不織布が安く仕入れることができるルートから調達をするだけ、ということが言いたいのだ。
もちろん、今回のマスク不足から政府の要請を受け、「原材料も国産」に切り替える企業も出てきている。例えば、この7月から宮城県角田市にマスク工場を稼働させるアイリスオーヤマは、不織布の製造設備も導入。内製化率を高め、中国一国に依存する供給体制を見直していくという(関連記事)。
しかし、このような体制をつくることができる事業者はほんの一握りだ。大半のメーカーは、これまで輸入していたものを国内生産に切り替えると、人件費の高騰から価格を上げざるを得ない。そうなると「高品質低価格」を求める消費者からそっぽを向かれるので、安くて質のいい原材料を海外からいかに引っ張ってくるかという熾烈(しれつ)な競争が始まる。
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