あなたの会社がZoomではなくTeamsを使っている理由:専門家のイロメガネ(2/3 ページ)
「Zoom飲み」といった言葉をSNSでも度々見かけるほど、ごく普通に使われる、ビデオ会議ツールのスタンダードになってきたZoom。ところがついに自社にもWeb会議ツールが導入されると思ったら、ZoomではなくSkypeやTeamsだった――。その理由には、マイクロソフトのビジネスモデル戦略があった。
あなたの会社がWeb会議システムを導入する場合、ZoomとTeamsのどちらが選ばれるか?
例えば以下のような状況を想定して考えてみよう。
都内に本社を置く専門商社。従業員数は1000人強、全国の拠点数は50拠点、営業担当が半数以上で全国各地を飛び回っている。新型コロナウイルスの影響で対面営業ができなくなり、在宅勤務とWeb商談の環境を整えるため、ビデオ会議ツールの導入が決定した。もともと想定していた事態ではないので、今年度の予算にビデオ会議の費用は組み込まれていない。
緊急事態であり、利用者数が多いため、IT助成金などもあるが、Zoom導入はかなりのランニングコスト増である。
ところがこの会社は、マイクロソフトとMicrosoft Enterprise Agreement(以下 EA契約)を契約していた。EA契約とは、法人向けの特別なボリュームディスカウントプランである。契約企業はWord、Excel、PowerPointといったオフィスソフトを中心に、Microsoftの提供するほぼ全てのサービスが使用可能になる。
そしてEA契約には、あまり活用していなかっただけで、このプランにビデオ会議システムのMicrosoft Teamsがすでに含まれていたのである。追加のランニングコストは不要で、システムの構築も既存の取引先で可能、OutlookやAD連携など他のMicrosoftのシステムとの親和性も高かった。
Zoomの導入を検討した場合、コストアップ以外に、構築できる業者選定やシステム連携などに手間がかかってしまう可能性がある。結果、相見積もりなどを実施せず、Microsoft TeamsでのWeb会議システム構築が稟議にかけられ、承認された……。
ユーザーを自社サービスにロックイン(囲い込み)する
バンドルプランの利点は、単体で販売するよりも購入単価を上げることができる点だ。既存の顧客、または見込み客に対して購入単価を上げることをアップセルというが、バンドルプランはこのアップセルにとても効果的な手法だ。
最初はWord、Excel、PowerPointのみ使用できれば、と契約した。しかし契約更新のたびに利用できるプランを増やす提案を受け、最終的にEA契約になる。そしてTeamsが使えるようになっている。この状態だと、Zoomを導入しようとすると、どうしても追加費用がかかる。
新しく導入されたビデオ会議システムがZoomではなくTeamsだった場合、ZoomはTeamsに機能で劣るから導入されなかったというわけではないだろう。バンドルプランというマイクロソフトの販売戦略が、Zoom導入の最大の障壁となっていた可能性が高い。このように、競合サービスを選択肢から除外させる状況を意図的に作ることを、「ロックイン(囲い込み)」という。
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