コロナ不況に「がんばれ日本!」が、まるっきり逆効果になってしまうワケ:スピン経済の歩き方(2/6 ページ)
新型コロナの感染拡大を受けて、自粛生活が長引いている。そんな中で、「がんばれ!」という言葉をよく耳にするようになった。「がんばれ、もう少しの辛抱だ」「気を緩めてはダメ、がんばれ」といった文言が多いが、こうした傾向に対して、筆者の窪田氏は警鐘を鳴らしている。どういうことかというと……。
考え方の根底にガンバリズム
ご存じのように、日本はバブル景気以降、「失われた20年」という成長が停滞する時代に突入して、気がつけば先進国のなかで唯一、経済成長を果たしていない国になってしまった。当然、財政も最悪だ。「いや、それは真っ赤なうそで、国債のほとんどを国内に抱えている日本は借金などゼロだ!」と主張する人たちもいらっしゃるが、もし仮にそうだったとしても国民の生活はどんどん厳しくなっている。
賃金は先進国の中で最低の水準なので、消費は冷え込んでいる。低賃金労働がデフォルトなので生産性も断トツに低くて、イタリアやギリシャと並ぶレベルだ。さらに、相対的貧困率もOECD加盟国の平均を上回っている。日本製の温水洗浄便座を外国人に見せびらかせて「みたか! これがメイドインジャパンの底力だ!」なんて威張っていた間に、すっかり貧しい国になっていたのだ。他の先進国のように休業補償がバーンと払えないのがその証左だ。
ならば、この日本経済のダメっぷりは、日本人がサボっていたせいなのかというともちろんそんなことはない。新型コロナで外出自粛が要請されても、組織でがんばるサラリーマンの多くが電車に揺られて定時出社したように、どの国の労働者よりも生真面目に働いてきた。
労働時間に関してはそこまで際立って長いわけではないが、有給取得率は断トツに低い。では、休みづらいだけでヌルい環境でダラダラ働いているかというと、そんなことはなく、かなりハードなプレッシャーにさらされる。NHKも参加している国際比較調査グループ(ISSP)によれば、日本のパワハラ比率は25.3%と世界37カ国中第4位であり、主要先進国の中で際立って高い。そうなると当然、労働者の心もポキンと折れやすい。1998年以降、日本の自殺率はG7の中でトップとなっている。
つまり、「がんばれ日本!」に代表される日本人のガンバリズムが、日本経済にほとんど良い影響を及ぼさないことは残念ながら証明されてしまっているのだ。むしろ、「がんばれ、がんばれ」と叫ぶことに一生懸命になるあまり、問題の本質を見誤らせて、トンチンカンな対応を招いて、事態を悪化させてしまっている恐れもある。
関連記事
- 世界一規律正しい日本人が、「外出自粛」の呼びかけを無視するワケ
「不要不急の外出は控えてください」――。政府、自治体、医療関係者などが何度も訴えているのに、なぜ日本人は外出してしまうのか。筆者の窪田氏はマスコミの報道に原因があると見ていて……。 - 「喫煙者は新型コロナにかかりにくい」 まさかの新説は本当か
アメリカやフランスの研究チームが、ちょっと信じられない研究結果を発表した。「喫煙者は新型コロナにかかりにくい」というのだ。まさかの新説の裏に何があるのか。 - 非常事態終了を遅らせるバカにつける薬
日本人は今、2種類いる。非常事態解除を真剣に願い行動抑制する者と、非常事態の意味もコロナの意味も理解できない者である。 - なぜ「プリウス」はボコボコに叩かれるのか 「暴走老人」のアイコンになる日
またしても、「暴走老人」による犠牲者が出てしまった。二度とこのような悲劇が起きないことを願うばかりだが、筆者の窪田氏は違うことに注目している。「プリウスバッシング」だ。どういう意味かというと……。 - 結局、Zoomは使っても大丈夫なのか?
コロナ禍でテレワークの需要が高まる中、一気に知名度を上げた「Zoom」。しかしユーザー数の急増に伴い、セキュリティの不備が次々と発覚している。Zoomを使っても構わないのか? 慎重になるべきか? 問題点と対策を整理した。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.