テレワークを阻む「ハンコ文化」は政府の“太鼓判”で消え去るのか?:働き方の「今」を知る(5/5 ページ)
新型コロナの影響で導入が進むテレワークだが、それでも出社しないといけない環境を生み出しているのが「ハンコ」だ。もともと、無駄が多く生産性の低い「日本的」な労働慣行の代名詞でもあったハンコだが、従業員の感染リスクを減少し、生産性を高めるためにも官民でようやく「電子化」の機運が高まり始めている。
必要なのは「合意」
ちなみに法的には、ハンコ自体に特別な法的効力があるわけではなく、原則として署名があれば足りるとされている。契約については、「当事者間で合意した」という事実認定がなされれば成立するものなので、本質的には契約書面がなくとも、口頭やメール、LINEのやりとりなど、何らかの形で合意が成立していさえすれば有効なのだ。ハンコは、「確かに本人が押した」という単なる証明にすぎない。
従って、世の中に存在する取引の多くはハンコがなくても法的に何の問題もなく、契約する当事者の安心感を担保する程度の存在なのである(ただし例外的に、不動産登記や法人登記のように実印登録や実印の押印が法律で規定されている場合や、自筆証書遺言のように押印が要件の場合もある)。
今般のコロナ禍において数少ないメリットの1つであろう「紙とハンコ文化の撤廃」を推し進めるためには、この機に日本の商慣習自体を見直し、変えていくしかない。実際、日常生活においてハンコが法的要件になる事例はほとんどないので、いずれ印鑑制度自体も見直されることになるだろう。そもそもハンコ自体も、当時の技術の中で「簡単かつ便利な契約証拠作成ツール」として生まれ、広がっていった経緯があるわけだから、21世紀の今、ハンコに代わる安全な契約確認手段として電子認証を広めていくこともできるに違いない。
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