テレワークを阻む「ハンコ文化」は政府の“太鼓判”で消え去るのか?:働き方の「今」を知る(4/5 ページ)
新型コロナの影響で導入が進むテレワークだが、それでも出社しないといけない環境を生み出しているのが「ハンコ」だ。もともと、無駄が多く生産性の低い「日本的」な労働慣行の代名詞でもあったハンコだが、従業員の感染リスクを減少し、生産性を高めるためにも官民でようやく「電子化」の機運が高まり始めている。
動きが速かった企業はどこ?
「ハンコの電子化」によるメリットは枚挙にいとまがない。用紙代、印刷代、印紙代、郵送料などが不要になることでコスト削減につながるほか、タブレット、スマホといったモバイル機器でも調印可能となることから、契約に要する時間を大幅に短縮できる効果もある。
大手IT企業の動きも早い。フリマアプリを運営する「メルカリ」は、従業員の感染リスクを軽減するため、押印の原則廃止を早々に決定。電子署名、もしくはPDF化した契約書にサインする方法に変えた。またネットインフラ・広告などを手掛ける「GMOインターネット」グループにおいても、印鑑の撤廃と契約のペーパーレス化を決めた。「LINE」では原則として書面での契約を廃止し、映像配信大手「U-NEXT」も契約書や請求書の電子化を決定している。
電子化のサポートを提供する側も続々とサービスを開始した。「NEC」はシステム子会社を通して電子署名サービスを今月からスタート。契約書面をクラウドにアップし、スマホ経由で署名や承認手続ができるものだ。また「大塚商会」では、電子契約を導入する中小企業を対象に、契約書の電子化と、導入に際しての法務・税務のコンサルティングをパックにしたソリューションの提供を開始している。
しかし、自社グループ内では押印廃止ができても、取引先が廃止に応じなかったり、届け出が必要な行政機関への書類の多くでいまだに押印が必要であったりするため、担当者が定期的にハンコのために出社しなければならない状況は変わらないようだ。
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