テレワークを阻む「ハンコ文化」は政府の“太鼓判”で消え去るのか?:働き方の「今」を知る(3/5 ページ)
新型コロナの影響で導入が進むテレワークだが、それでも出社しないといけない環境を生み出しているのが「ハンコ」だ。もともと、無駄が多く生産性の低い「日本的」な労働慣行の代名詞でもあったハンコだが、従業員の感染リスクを減少し、生産性を高めるためにも官民でようやく「電子化」の機運が高まり始めている。
政府でも「脱ハンコ」の機運が高まる
それから2年。コロナ禍という外部要因ではあるものの、紙とハンコを基にした対面決裁中心の慣習を見直すべく、ようやく国と大企業は本腰を入れて動きはじめようとしている。
安倍首相は4月22日、政府のIT総合戦略本部の会合において「民間の経済活動で紙や押印を前提とした業務慣行を改めるよう、全面的に点検してほしい」と閣僚らに指示した。続いて27日の経済財政諮問会議においても、「新型コロナウイルスの感染拡大に伴う緊急経済対策について、国民が迅速に支援を受けられるよう、対面での書面提示や押印などの慣行見直し」を指示している。いずれも、ハンコ文化が企業のテレワークを阻んでおり、押印のためだけに出社する事態を減らそうという意図だ。
同時に、他の大臣たちも動きを見せた。
竹本直一IT担当大臣は自民党の「日本の印章制度・文化を守る議員連盟(ハンコ議連)」会長でもあり、これまで業界寄りの発言が目立っていたが、安倍首相の22日の発言を受けて「首相のおっしゃる通り。それに従いデジタル化を進める。本人の意思が確認できれば(押印の)省略も十分ありうる」とコメント。24日の閣議後会見でも「ハンコのために会社に行くと公共交通機関の中で密の状態が発生する。できるだけ省いた方がいい」と述べるとともに、「議連は続けるのか」との記者の質問に対して「辞めろといわれれば辞めても構わない」と回答し、「脱ハンコ」の姿勢を見せた。
また河野太郎防衛大臣も、「今、ハンコは最大4つまでにしろと言ってますが、こういうコロナの状況で果たしてハンコが必要なのか。電子で稟議やれるような仕組みもありますから」「ハンコは日本の文化だが、業務の効率化を考えるとサイバー、新領域だと言っているなかで防衛省が率先してやらないといけない」とコメントしており、省内のシステム変更も踏まえて対応していく方針を示している。
そして総務省では有識者会議において、企業間でやりとりする請求書などの電子書類が本物であると証明する制度の運用を2022年度から始める案を示した。これは「eシール」と呼ばれる、電子書類の作成時刻や改変がないことなどを示すいわば「電子版の社印」だ。これが普及すれば、わざわざ出社して紙の書類にハンコを押して郵送するといった一連の手間が省けることになる。
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