ベイスターズ初代球団社長が語る、コロナ時代に必要な「変える力」とプロ野球生き残りの道:池田純のBizスポーツ(2/4 ページ)
新型コロナウイルスの影響で窮地に立たされるプロスポーツビジネス。「コロナの時代」を見据えた経営に必要なものとは? 親会社や前例にとらわれない「変える力」こそ必要だと、埼玉ブロンコスオーナー/横浜DeNAベイスターズ初代球団社長、池田純氏が解説する
「1億総プロ野球ファン」も夢ではない!?
これを機に、12球団でまとまって映像を自ら配信するなど、メジャーリーグのようなリーグビジネスが、ついにできる機会になるのではないかとも感じます。多くの人がエンターテインメントを求めている中で「1億総プロ野球ファン」「1億総サブスク化」も夢ではない。そこで上がった収益を、ワクチン開発に寄付したっていい。“コロナショック”を食らわず、お金を出せる会社も依然存在しています。そういうところに大スポンサーになってもらったり、球団を保有してもらったりして、放映権料や放映そのものの形を変えていく。過去からの連続性で考えるのではなく、危機だからこそ非連続なものにチャレンジする、いわば「変える力」が大切になるのです。
いずれにしろ、これまでのような人を集めた「完全」な興行は、ワクチンが開発されるまで難しいでしょう。ワクチンがない限り、人を集める興行にはリスクが伴う。それは、Microsoft共同創業者のビル・ゲイツ氏がワクチン開発に多額の資金をつぎ込んでいることにも表れています。ワクチンが開発されても、それが行き渡るまで時間がかかる。つまり、新たな収益のつくり方、既存の売上のポートフォリオから変化していかないと、プロスポーツは成り立たなくなります。
そして、長い歴史があり、経営面に余力もあって、日本のスポーツを引っ張る立場にあるプロ野球こそ、こうしたエンターテインメントの新しい形のベンチマークを、先陣を切って示してもらいたい。私が今、球団社長やオーナーを務めていたら、しがらみや既成概念を超えて「変える」ことに挑戦していただろうと思います。
私がベイスターズでやったのは、野球ファンでなくても楽しめる球場をつくり、お客さんに来てもらうビジネスでした。しかし、それはもう古いとすらいえる。ベイスターズのようなスポーツエンターテインメントビジネスの前例をまねしていれば大丈夫……という“ビフォーコロナ”の時代は終わったのです。次のフェーズに向けて、ゼロから考えていかないと全て通用しなくなってしまったのです。
今、求められているのは何より“サバイブ(生き残る)”です。誰にも頼らず、失敗を恐れず、生き抜く術を自分たちで見つけ出す。そもそも、サバイバルとはそういうものです。日本人が豊かになるとともに、弱くなってしまった部分。それが、まさに問われているのだと思います。日本特有の親会社の“ミルクマネー(支援金)”で支えられているプロスポーツの構造は、大きな変革期を迎えています。過去の常識なんか“ビフォーコロナ”と“コロナの時代(ウィズコロナ?)”で全て変わります。
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