「上司の顔色伺い」は激減? テレワークでは通用しない“働かないおじさん”:河合薫の「社会を蝕む“ジジイの壁”」(1/4 ページ)
新型コロナによって、多くの企業がテレワークや在宅勤務の導入を余儀なくされた。今後は新しい働き方として定着していくだろう。そうなると、上司と部下の関係も変わる。前例や慣習が通じない世界が待っている中、新しい上司部下関係を構築していく必要がある。
アフターコロナにどんな世界が待ち受けているのか? おそらく誰もが、恐怖と不安とひそかな期待の間をさまよっているのではないでしょうか。
これまでも感染症が多くの犠牲者を出す反面、さまざまな変革をもたらしたことが知られています。例えば、世界をパニックに陥れた感染症の代表格、「ペスト=黒死病」が14世紀に欧州で猛威をふるった際には、少なくとも欧州人口の約3分の1が犠牲になったと記録されていますが、「ペストは近代の陣痛」と呼ばれることがあります。
ペストが流行した当時の西ヨーロッパで、資本主義経済の原型が生まれたというのです。
それまで農家で収穫したものは、年貢として領主に納められていました。しかし、ペストでたくさんの農民が亡くなったため、領主は「どうしたら今まで以上の働きをみんながしてくれるだろうか」と考えました。その結果、たどり着いたのが「土地を貸し、自由に使う権利を与える」戦略です。
農民たちはそれまで領主から言われたことだけをやっていたのですが、「自分の土地だ!」と所有する喜びから、何を植えるか? どんな家畜を飼うか? を考え、いいものを作って高く売るために頑張るようになった。つまり、「裁量権」が働く意欲を向上させたのです。
裁量権は仕事をする上で極めて重要です。「自分で自由に決めることができる」ことは、人間の生きる力を引き出します。14世紀から600年以上経った「私たちの世界」でも、元気な会社は働く人に裁量権を与え、自由と責任のバランスをうまくコントロールすることで生産性を向上させています。
で、今回。新型コロナのパンデミックにより、企業はそれまで一向に進まなかった「テレワーク」や「在宅勤務」導入を余儀なくされました。多くの人たちは「自由に働く権利=裁量権」を手に入れたのではないでしょうか。裁量権には「休む自由」も含まれるので、仕事に集中したり、休みを入れたり、ギアチェンジできる。緩急をつけられれば、案外仕事は楽にこなすことができます。
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