テクノロジーは全てを解決しない 人事担当者が知っておくべき「HR Tech」の実像:HR Techの現在地(3/5 ページ)
膨大な数のサービスが登場した「HR Tech」だが、企業の人事課題を何でも解決する“魔法の杖”として過信するのは禁物だ。熟慮せずに導入したことにより、何も解決せず、またかえって担当者の負担が増大してしまうケースも少なくない。本記事では、複数のあ企業で人事責任者を“複業”し、人事領域に詳しい高橋実氏が、人事担当者として知っておくべき「HR Techの実像」を解説する。
圧倒的に足りていない、導入前の「本質的な議論」
例えば「組織がギスギスしているので何とかしたい」という課題があったとしましょう。社員のモチベーションも落ちていて、退職者の増加やメンタルが落ち込む社員も発生しつつあり、経営者は危機感を持っています。
そして、経営者から人事部に対して「360度評価をして、解決したい」というオーダーがあったとします。人事担当者は「分かりました。では、360度評価のサーベイを探します」となる。果たしてこれは、あるべき姿なのでしょうか。
ここで明らかに足りないのは、本質的な「問い」と「経営者との議論」です。本来であれば、
「本質的なボトルネックは何か」
「どのような方法をとって解決したいのか」
「どういう状態になれば『いい状態』なのか」
などの、経営者と人事担当者の双方向的な議論が必要になるはずです。しかし、残念ながら経営者の本質的な課題感まで踏み込んで議論を返せる人事担当者は、まだまだ少ないというのが実感です。
組織がギスギスしている理由は、果たしてどこにあると考えられるのか。
もしその原因がマネジャーの問題だとしたら、どうなるでしょう。マネジャーと部下の関係がそもそも悪くギスギスしている中で、サーベイをやり、マネジャーのマネジメント課題が可視化されてしまったら? マネジャーは「それは部下が悪いからだ」と言い放つかもしれません。最悪の場合、サーベイで悪い評価をつけた部下の“犯人捜し”をすることもあるかもしれません。そうなれば、さらに信頼関係は悪化してしまう。
このような点まで踏み込んだ経営者と人事担当者の議論が必要です。
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