「追加で8万円給付」の詐欺メール 背後に“外貨がほしい”北朝鮮の影:世界を読み解くニュース・サロン(1/4 ページ)
北朝鮮が新たな大規模サイバー攻撃を始めた。目的は、新型コロナで疲弊する国家財政を補う外貨の獲得。各国政府が給付する支援金をネタにした偽メールを大量に送付している。北朝鮮のサイバー攻撃能力は高い。手口を知り、冷静に対処することが必要だ。
最近また、国家型のサイバー攻撃がニュースで話題になっている。
例えば、新型コロナウイルスの発生について国際的に独立した調査を求めたオーストラリア。そのせいで中国から報復関税などを受け、さらに最近スコット・モリソン首相が記者会見を開き、政府や産業界、インフラ、教育、保健、サービスに対して、「国家」が背後にいるとみられる大規模サイバー攻撃を受けていると発表した。この「国家」とは、中国のことだと考えていい。
またインドと中国の国境沿いの争いでインド兵20人ほどと中国兵40人ほどが死亡したとされる問題でも、インド政府は中国から政府機関や金融部門などへの激しいサイバー攻撃を受けていると主張している。
最近では国家間の争いが絡んで、政府や民間企業がサイバー攻撃の被害を受けるケースが増えている。妨害行為の場合もあれば、ライバル国の大手企業を攻撃して長期的に国の経済を疲弊させることが目的の場合もある。中国やロシア、イランなどがこうした攻撃を敵対勢力に向けて頻繁に仕掛けていることは、セキュリティ関係者の間では周知の事実である。
一方で、単純に国家財政のために、敵対国などへのサイバー攻撃を繰り返している国もある。そう、北朝鮮である。途上国の銀行や仮想通貨取引所を狙ったりと、この連載でも過去に北朝鮮の攻撃については取り上げてきた(参考記事:暴かれた「北朝鮮サイバー工作」の全貌 “偽メール”から始まる脅威)。
そして今、世界的な新型コロナの感染拡大で国内経済が疲弊し、さらに米国との非核化交渉も進まず経済制裁が重くのしかかっている北朝鮮が、また新たな大規模サイバー攻撃に乗り出している。いや、乗り出さなくてはならなくなったと言った方がいいかもしれない。
まさに世界が新型コロナからそろそろ立ち直ろうとしているこの時期を狙って、北朝鮮は日本を含む世界6カ国をターゲットにしたかなり大規模なサイバー攻撃のキャンペーンを始めた。しかも手口は全て、新型コロナに絡む政府からの補助金に関するものだ。一般市民や企業を広く狙った攻撃だけに、特にビジネスパーソンにとっては、コロナ禍から仕事が元通りになっていくゴタゴタの中で、いつも以上の警戒が必要だろう。
関連記事
- 暴かれた「北朝鮮サイバー工作」の全貌 “偽メール”から始まる脅威
2014年に米国で発生した大規模サイバー攻撃の犯行メンバーとして、北朝鮮ハッカーが訴追。メールやSNSを悪用した犯行の詳細が明らかにされた。北朝鮮という「国家」によるサイバー工作の恐ろしさとは…… - “テレワーク急増”が弱点に? 新型コロナで勢いづくハッカー集団の危険な手口
新型コロナウイルス感染拡大で世界が混乱する中、それに便乗したサイバー攻撃が激増している。中国やロシアなどのハッカー集団が暗躍し、「弱み」につけ込もうと大量の偽メールをばらまいている。新型コロナに関する情報と見せかけたメールには注意が必要だ。 - 中国の“嫌がらせ”を受けるオーストラリアに、コロナ後の商機を見いだせる理由
新型コロナを巡って、オーストラリアと中国の関係が悪化している。もともと両国の経済関係は深いが、中国は買収や投資によって影響力を強めており、オーストラリアでは不信感が募っていた。対立が深まる今、オーストラリアが日本との関係を強化する期待もできそうだ。 - 「シリコンバレーは中国に屈する」 Google元会長のエリック・シュミットが声高に唱える“危機感”
トランプ大統領が中国の脅威を煽っているが、Googleのエリック・シュミット元会長も、AIの分野で中国への危機感を主張する。中国は人権を無視したデータ収集や企業への巨大投資によって、スマートシティ構想を加速。日本も含めて、研究開発を進めないと追い付けなくなる。 - 僕らのヒーローだったジャッキー・チェンが、世界で嫌われまくっている理由
香港アクション映画の象徴的存在、ジャッキー・チェンのイメージダウンが止まらない。隠し子である「娘」の振る舞いや、自伝で語られた「ダメ人間」ぶりなどが欧米やアジアで話題になっている。私たちのヒーローだったジャッキーに何が起きているのか。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.