「超満員」がなくなった時代に、横浜DeNAベイスターズ初代球団社長が考えるスポーツビジネスの“ニューノーマル”:池田純のBizスポーツ(3/4 ページ)
コロナでなくなった「超満員」のスタジアム。これまでスタジアムを満員にすることで経営を成り立たせてきた向きもあるスポーツビジネスは、今後どうすればよいのか。さいたまブロンコスオーナー/横浜DeNAベイスターズ初代球団社長の池田純氏が語る。
「仕事」と「業務」の違い
もはや、「(行かなくても成り立つのに)行くのは面倒くさい」「通勤の時間が無駄」と公然といえるようになったのにいわない、実行しないのはもったいない。これまでの習慣から解き放たれれば、多くの人が住みたいところに住めますし、企業も居住地の制限なく、いい人材を巻き込めます。ブロンコスには、鎌倉の私をはじめ、東京都内だったり、群馬だったり、埼玉のはじっこだったりに住んでいる人間が集まっています。コロナ以前なら不便で仕方がなかったと思いますが、もはや週に1、2回しか集わないので、どうにでもなります。
こうした「ニューノーマル」な会社の在り方を実践するには「仕事」と「業務」の違いを認識している社員、認識させる経営者の存在が不可欠です。「在宅勤務になって、業務時間中はずっとPCの前にいないといけないんです」などという声をよく聞きますが、せっかく通勤時間もなくなり、使える時間が増えたのに、それはあまりに非効率的です。PCの前にいるのは、決まった会議の時間だけでいいのであって、結果だけを求め、一つ一つの仕事をより丁寧にできる環境になったと捉え、実行するべきではないでしょうか。
あくまで「業務」は「仕事」の過程でしかなく、「仕事」で結果さえ出せばいいのです。さいたまブロンコスでの私の今年の目標は「コロナ禍の中でも赤字にしないこと」「B3の優勝に近いところで可能な限り戦うこと」です。これが「仕事」であり、そのための過程は全て「業務」。無駄なことをやる必要はありません。
その分、上司はミッションの出し方が重要になり、何をやってほしいかを明確に伝えなければいけないですし、目指すべきもの、会社がどういうふうにありたいかをしっかり理解できていないと成り立たない。それが、これからの時代の会社のあるべき姿だと考えます。より一層、「ミッションや方針の共有」の徹底、それに基づく「ホウレンソウ(報告・連絡・相談)」「信頼」が重要な時代だといえます。極端な話、「“業務”に費やす時間」はどうでもよく、「“仕事”の結果」を問われる時代になったということです。
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