「超満員」がなくなった時代に、横浜DeNAベイスターズ初代球団社長が考えるスポーツビジネスの“ニューノーマル”:池田純のBizスポーツ(4/4 ページ)
コロナでなくなった「超満員」のスタジアム。これまでスタジアムを満員にすることで経営を成り立たせてきた向きもあるスポーツビジネスは、今後どうすればよいのか。さいたまブロンコスオーナー/横浜DeNAベイスターズ初代球団社長の池田純氏が語る。
何でもやってみる
そんなことは理想論だ、非現実的だと思う人もいるかもしれません。しかし、数カ月前を振り返ってみてください。“Zoom飲み”なんてものをやろうと考えた人はいるでしょうか。私自身も「そんなのあり得るのか?」と最初は思っていました。しかし、あり得なかったものが、今や一定の市民権を得ている。私自身も「意外に使えるな」と思うようになりました。飲み会は、意思疎通を図るための一つのツールです。そう考えれば「これもアリ」と思える。何でもやってみるというマインドがないとニューノーマルは実現できません。
以前は、家にいると家族に心配され、自分でもどこかに行かないと不安になることもありました。しかしニューノーマルな生活に慣れてしまえば、そんな旧来の考え方は気にならなくなります。今回のコロナ禍で、せっかく多くの人が新しい生活様式に慣れたのに、またいつコロナの時代に逆戻りするかも分からないのに、なぜそれを全て捨てようとしてしまうのか。さいたまブロンコスのクラブ経営においても、私は試合が行えない状況が続いた場合の“保険”をつくることしか今は頭にありません。先ほど紹介したもの以外でも、あちこちにバスケットボールをできる環境をつくり、スポンサーを集めて、アカデミーの生徒を集めていく。そんなデュアルインカムを実現しようと動いています。
それは、スポーツに限らず日本の社会全体に必要とされている考え方です。100%元に戻ることを願い、それを前提に動いているような経営者に経営を任せていても、良い結果にはならないでしょう。「ニューノーマル」を早急につくりあげること。それが今、まさに求められているのです。
著者プロフィール
池田 純(いけだ じゅん)
早稲田大卒業後、博報堂等を経て2007年にディー・エヌ・エーに参画。
2011年に35歳という史上最年少の若さで横浜DeNAベイスターズの初代球団社長に就任。
2016年まで社長を務め、さまざまな改革を主導し球団は5年間で単体での売上を倍増し黒字化を実現した。
退任後はスポーツ庁参与、明治大学学長特任補佐、Jリーグや日本ラグビー協会の特任理事等を歴任。
現在はさいたま市と連携しスポーツで地域創生、地域活性化を図る(一社)さいたまスポーツコミッションの会長も務める一方、
大戸屋やノジマ等企業の社外取締役からITやゲーム業界、スタートアップ等の顧問も務める。
池田純公式サイト「Plus J」: https://plus-j.jp/
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